レインボーリボン メールマガジン 第66号 生きるために地域を変える

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第66号
■■   生きるために地域を変える
  2019/9/30
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レインボーリボンの1ヵ月の活動報告と、代表・緒方の思いを伝えるメールマガジンです。

9月はレインボーリボンの活動拠点、葛飾区の公立中学校で「いじめ防止教室」を実施しました。
6年前のNPO法人化とともに取り組み始めた「いじめ防止」。
NPO法人湘南DVサポートセンターの瀧田信之代表理事の「いじめ防止プログラム」に倣った授業です。
初回、生徒たちに「気持ち」を表現するツールとしてお天気マークを示し、「自分の気持ちを大切にしよう」と呼びかけます。
暴力に支配されないために。
怒りの感情のコントロール方法も教えますが、「怒りを忘れよう」とは言いません。喜びも悲しみも怒りも、大切な「気持ち」です。無視したり押さえつけたりしないでくださいと呼びかけます。

23日、国連本部で開かれた気候行動サミットでスウェーデンの環境活動家、16歳のグレタ・トゥンベリさんが示した「怒り」は、私たち大人の心に刺さる、本当に大切な「気持ち」でした。
「若者たちはあなたたちの裏切りに気づき始めている。私たちを見捨てる道を選ぶなら、絶対に許さない」。

レインボーリボンの活動のもう一つの柱「こども食堂」。今月も3回の開催に取り組みました。
「こども食堂」は一時ほどマスコミで取り上げられなくなりましたが、様々な困難を背負った子どもたちを支援したいと考える地域のおじちゃん、おばちゃんたちが今も全国各地で静かに地道に動き続けていて、寄付やボランティアで支えてくれる人も後を絶ちません。

しかし私は時々、自分がやっていることは小さな自己満足に過ぎないんじゃないかと思うこともあります。
食べることに本当に困っている子どもにとって、月に何回か、週に何回かの何食かを提供されたところで、根本的な解決には程遠いのです。

特に今月9日、台風15号がお隣の千葉県を直撃し、停電や断水が長引きました。
17日に学校が再開されても給食施設が被災していて、子どもたちはお弁当を持って登校しなければなりませんでした。給食がなければ1日1食も満足な食事が摂れない子どもがいるだろうと思いながら、日常の忙しさに紛れて何もできずにいる自分が情けなく、無力感に苛まれました。

私個人の力はあまりにも小さく、たくさんの仲間に助けられて続けている「こども食堂」の活動にも限界があります。
子どもの成長に必要な栄養を、すべての子どもの心にも身体にも保障するセイフティーネットを、どうしたら作ることができるのでしょうか。

地球温暖化がこのまま進めば、スーパー台風、ゲリラ台風が何度でも関東を襲うと言います。
私たち大人は、自分の子ども時代とは明らかにちがう「気候危機」に気づいていながら、行動を起こさず、子どもたちの未来を奪う道を漫然と歩いています。
グレタさんの「怒り」を受けとめ、行動を起こさなくてはなりません。
でも、どうやって・・・?

9月、児童虐待に関する大きなニュースもいくつかありました。
目黒区で虐待によって昨年3月亡くなった5歳の船戸結愛ちゃんの母親に、東京地裁で懲役8年の実刑判決が言い渡されました。
虐待の背景に夫からのDVがあることも注目されました。

冒頭の「いじめ防止教室」もDVに対するアンテナを立てるところから始まります。
被害者、加害者、傍観者、それぞれの立場で行動を変えることによって「いじめ」はなくせるという信念のもと、暴力の被害に遭っている時に「怒り」や「悲しみ」を無視しないで、気持ちを表現すること、自分の身を守ることを子どもたちに促します。
中には「小さい時、お父さんのDVを受けていました」と告白してくれる生徒もいます。

鹿児島市出水市で4歳の大塚璃愛來ちゃんが8月に亡くなった事件で、母親の交際相手が暴行容疑で逮捕されていましたが、今月21日、処分保留で釈放されています。
璃愛來ちゃんは以前住んでいた薩摩川内市で昨冬から今春にかけて、夜一人で裸足で歩いているところを何度も近所の人や警察に保護されるなど、虐待から救い出す機会があったのに、自治体や児童相談所が「見守り」に終始した結果、悲劇が繰り返されました。

大阪では4歳男児に暴行した母親を府警が書類送検した事件をめぐって、府警が児相に資料提出を求めたものの断られたというニュースがありました。
「息子を虐待してしまう」と自ら相談に来ている親との信頼関係を大切にしたいという児相の立場もあるのでしょう。児相と警察の情報共有については専門家の間でも意見が分かれています。

児相への相談や通告は急増していて、昨年度の対応件数は15万9850件。担当する案件が100件を超える児童福祉司も珍しくないそうです。
全国283カ所の配偶者暴力相談センターに寄せられたDV相談も昨年度11万4481件で過去最多と、25日に内閣府が発表しました。

こども食堂にできることは少ないですが、今月、ひとつホッとしたのは、私が虐待を心配している家庭の子どもが、ある人に「自分の気持ちを吐き出す場があまりない」と吐露して、同時に「お母さんの悩みは緒方さんが聞いてくれる」と話したということです。
親子の関係が暴力的にならないように、いろいろな人が環境をサポートする、その一角を担えているのかな、と思いました。

グレタさんが表現してくれた「怒り」。
身近な子どもが吐露してくれた「気持ち」。
いま生きている、未来の我々の社会を作っていってくれる子どもたちが、できれば笑顔で、幸せに、当たり前に生活できる環境を守りたい、作りたいと思います。

9月の終わりにもう一つ、驚くべきニュースがありました。関西電力の役員など20人が高浜原発がある福井県高浜町の元助役から計3億2千万円の金品を受け取っていたというのです。
「地球温暖化対策として原子力発電を」という主張に、安易に世論が流されないためには、良いタイミングだったかもしれません。
こういう不透明な「大人のやり方」、地域社会のあり方こそが未来を暗くしているのです。

私たちが地域でやるべきこと、できることはまだまだある。
一人ひとり、ひとつひとつの取り組みは小さくても、あきらめずに行動していかなくては、子どもたちの未来が、私たちの地球が、なくなってしまいます。
                                  (代表・緒方美穂子)