レインボーリボンのメールマガジン第53号「こども食堂の在り方、ネットワークの在り方」

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第53号
■■   こども食堂の在り方、ネットワークの在り方

2018/8/31
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酷暑の中、ただでさえ頭の回転が鈍いというのに、今月はこども食堂の在り方について、ネットワークの在り方について、本当に「頭を抱える」ほど考え抜きました。いえ、結論は出ていないので、過去形ではなく、考え考え、今に至っています。

 

8月の最終日曜日、「こども食堂ボランティア・スキルアップ講座 困難を抱えた子どもに寄り添う支援」を開催しました。

1日集中の午前午後、合わせて5時間!

プログラムとして、まずはレインボーリボン代表の私から「レインボーリボンが目指す子ども支援」、NPO法人ハーフタイム理事長の石原啓子さんから「子どもの貧困 現場から」、副理事長の三枝功侍さんから「ハーフタイムの取り組み」、それぞれ1時間ずつ講義・・・のつもりでしたが、事前に三枝さんから送られてきた当日資料を見て、急きょ、三枝さんには1時間30分の講義をお願いしました。

 

私がこの講座で学びたかったのは、安心安全な居場所としてのこども食堂を継続していくためのスキルです。例えば、調理ボランティアの立場からは食中毒を起こさないための食品衛生のスキルが必要ですし、遊びスタッフとしては遊びの研究が、学習支援ボランティアとしては学習支援のスキルアップがこれから必要になってきます。でも、すべてにおいて、一番大切で、絶対に必要なスキルは「困難を抱えた子どもに寄り添う心」です。

三枝さんはまだ30才の若いNPO活動家ですが、大学生ボランティアとして11年前から葛飾区に関わり始め、支援の手がなければ人間らしい生活が送れないような崖っぷちに追い込まれている子どもたちに寄り添い続けています。

 

三枝さんが紹介したハーフタイムの活動は、本来落ち着ける場所であるはずの「家」や、他の子が毎日通っている「学校」が安心できる「居場所」になっていない子どもたちに、それ以外の「第三の居場所」を地域に作るというものです。「居場所」は具体的な場所と日時を特定した「拠点型」のものだけでなく、その都度子どもたちの要望に応えて体育館を借りてスポーツをしたり動物園に出かける等の「レクリエーション」もありますが、私たち講座参加者が何よりも驚かされたのは、「個別対応」という、三枝さんたちボランティア本人が、まさに「その子」の安心できる「居場所」となる活動です。

早朝だろうが深夜だろうが、その子が家に居られない時、辛い時に、駆けつけて話を聞く、一緒に過ごす「寄り添い」です。

 

このような活動は一朝一夕にできるものではありません。三枝さんもボランティアを始めた当初は、非行に走りそうな少年に「そんなことじゃダメだ」「こうしよう」と自分の価値観を押しつけていたのだと言います。ある時その子に「俺には俺の人生があるんだよ!」と言われ、考え方を変えたそうです。

自分のモノサシで測るのではなく、ありのままのその子を受け止める。まずは子どもとの関係性をつくる。悩みや困難を聞き出そうとはせず、「溜め」の時間を大切にする。そして、子どもが自分を信頼して何かを打ち明けてくれた時には、まず「ありがとう」。叱咤激励ではなく、どうすれば良いかを一緒に考える。

 

私たちレインボーリボンが半年前から新たに始めた「よみかき宿題こどもカフェ@なぎ」は、困難を抱えた子どものための、少人数登録制です。スクールソーシャルワーカーの紹介等で登録者は10人を超えましたが、毎回の実際の参加者は多くて6人、少ない時は1人でした。

長期の不登校、引きこもりがちな生活のため、昼夜逆転していて「こどもカフェ」の時間に起きてこられない子もいます。「困難を抱えている子を対象とするのは、やはり非常にたいへんなことだ」と思っていましたが、三枝さんの言葉にハッとしました。

「昼夜逆転していても、その居場所がその子にとって必要な、楽しい居場所だったら、起きてくるんですよ」。

なるほど・・・。子どもの参加が少ないのは、子どものせいではなくて、私たちがその子にとって必要な、楽しい居場所を作っていないからなのです。胸に突き刺さりました。

 

ハーフタイム理事長の石原啓子さんは、葛飾区役所に34年間勤務し、そのうちの22年間を福祉事務所のケースワーカーとして生活保護に関わる仕事をされてきました。

「貧困」とはどんなものなのか。石原さんはケースワーカー時代、実際に生活保護の水準でご自身が2カ月間、生活してみたそうです。映画、旅行などはもちろん行けない。友人とお茶を飲みにも行けない。もし近隣でお葬式があっても香典を包めないので参列できない。つまり「貧困」とは、世間からどんどん排除されていくことなのだと分かったそうです。

 

生活保護を受けていても決して「文化的な最低限度の生活」が送れるとは言えませんが、もっと悲惨なのは、「働いていれば受けられない」という誤解や偏見のために、生活保護を受けていない世帯です。ある母親は毎月、給料日前はお財布に何十円しかないという生活をしていたそうです。

「そんな生活をしていたら、精神的に参ってしまっても当然だと思いませんか?」と石原さんは問いかけました。

 

石原さんは貧困を背景とした「虐待」の現場もたくさん見てきました。「貧困の世代連鎖」も大きな問題ですが、虐待もまた、連鎖が怖い問題です。

児童虐待で幼い命が奪われたという事件が起きると、世間では「なんて親だ!」と怒りの世論が沸き上がりますが、石原さんはどうしても、その親の成育歴が気になると言います。マンションの一室に子どもを置き去りにして餓死させた母親は、自分も親に捨てられた過去があったそうです。

 

「子どもの貧困」は「親の貧困」です。この問題を放っておいたら、私たちの社会はたいへんなことになる。実体験に基づいた言葉には迫力がありました。

 

話題は変わります。

8月12日には、「こども食堂全国ネットワーク」のNPO法人化について話しあう交流会が新宿で開かれ、短期間の呼びかけにも関わらず、全国から約50人のこども食堂運営者が集まりました。結論として、NPO法人化は見送りとなりましたが、社会活動家の湯浅誠さんがネットワーク顧問となり、ネットワークを側面から支援する別組織を立ち上げることになりました。

 

この交流会の席で、「こども食堂」という絶妙なネーミングの産みの親、大田区の近藤博子さんが言ったことが印象的でした。

「食中毒を出さないように気をつけることはもちろんだが、万が一、ネットワークの誰かが食中毒を出してしまったとして、こども食堂が世間にボコボコに批判されることになったとしても、その仲間を見捨てないネットワークにしたい」。

ある運営者は、「近藤さんの言葉を聞いて涙が出てきた。それくらい自分は緊張していたんだな、と分かった」と言っていました。その運営者は、営業許可を得てお店を経営している、いわば「プロ」です。彼女が食品衛生についてそこまで緊張していたとは、シロウトの私は己の認識の甘さに、逆にショックを受けました。

 

8月8日には、昨年から夏休みとクリスマスに本社ビルの社員食堂でこども食堂を開いてくださっている日本オラクルに、青砥駅から外苑前駅まで、子ども12人、保護者5人を引率して行くという、楽しいけれども運営者としてはやはり緊張感たっぷりの「夏休み特別企画オラクルこども食堂」もありました。

 

今月のメルマガは日にちを遡っての活動報告となりました。

秋から冬に向けて、試行錯誤、右往左往の活動がつづきます。

(代表・緒方美穂子)

▼かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク連続学習会「こども食堂のいろは――安心安全な居場所づくりをめざして」

【第1回】 11月11日(日)14:00~16:00 「アレルギー対応。しかも安くておいしい料理のレシピ、教えます!」亀有地区センター第3会議室

【第2回】11 月25 日(日)14:00~17:00「こども食堂も子どもたちも地域ネットワークに支えられます。」かつしかエコライフプラザ

【第3回】12月9日(日)14:00~16:00「けが、アレルギー、感染症、子どもの居場所の危機管理」

【第4回】2019年1月11日(金)18:30~20:30 湯浅誠氏講演会「いま、なぜ『こども食堂』?」

 

▼PTAで活動中のパソコンが苦手なママの強い味方「パソ姫」(株式会社テクネス)

PTAやパソコン操作についての情報が満載の無料サイト

https://pasohime.com/

 

▼子どもの性被害相談アプリ「ne-ne(ねーね)」(NPO法人ライトハウス)

このアプリからマンガ「Blue Heartブルー・ハート」の電子版を読むこともできます。

女の子も男の子も、匿名での相談も可能。

相談アプリne-ne:https://s.lhj.jp

 

▼レインボーリボンへのご寄付がホームページからもできるようになりました。

http://rainbow-ribbon-net.org/

トップページから「支援の方法」ページにお進みください。

引き続き、子どもに提供する1食分の食材費300円を1口として、12口3600円の寄付(こども食堂の1食オーナー)も募っています。

口座名義:特定非営利活動法人レインボーリボン

  • 郵便振替口座:00170-7-449974
  • りそな銀行 青戸支店(店番号470)普通預金1520535

ご寄付くださった方はお名前、連絡先を下記レインボーリボン宛てにお知らせください。

「レインボーリボンのこども食堂通信」へのご芳名記載の諾否もお知らせいただけますと幸いです。

 

このメールマガジンは、代表の緒方はじめ、スタッフと名刺交換させていただいた方、

弊団体のイベント・講座にご参加いただいた方にお送りしています。

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