レインボーリボン メールマガジン 第100号 M(エム)

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第100号
■■   M(エム)
  2022/7/31
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。
記念すべき100号の送信となります。

いつも「今週をなんとか乗り切ろう」、「今月を乗り切れば来月は…」と思って頑張っているのですが、7月になってみると、6月がいかに平和だったか思い知らされるような日々でした。

まずは新型コロナウィルスの感染急拡大。
6月に印刷した「レインボーリボンのこども食堂通信」に「コロナの危機は過ぎたようです」というようなことを書いてしまい、赤面しつつの発送作業となりました。
6月には、コロナ前の活動形態に戻していくために、フードパントリー事業を縮小する方向でいろいろな計画を立てていたのですが、7月に入ってから5件もの新規登録があり、縮小どころではなくなってしまいました。
2021年度は98人だったフードパントリーの利用登録者は、22年度初めに登録更新の意思確認をした段階で53人にまで減りましたが、いま再び71人に増えています。

「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」として2019年から取り組んでいる長期休み中の「給食代替プロジェクト」は、コロナ禍が始まった2020年以降、経済的に苦しい子育て家庭への「困窮対策」という性格が強くなっていましたが、昨年度からは徐々に、ネグレクトや親の障がいが原因で食事を用意してもらえない子どもへの支援に重点を置くように心がけてきました。経済的な支援はふだんのフードパントリーでカバーできる段階になってきているという判断がありました。
しかし、今回の夏休みは、家計のひっ迫を訴える親御さんからのSOSが複数寄せられ、コロナの影響が社会的に弱い立場の人を直撃した2020年の春休みを思い出しています。

当時の安倍首相が突然、一斉休校を打ち出し、子どもの「学ぶ権利」も「遊ぶ権利」も、学校給食がないと栄養が摂れない子にとっては「生きる権利」「育つ権利」も、こんなにも簡単に取り上げられるんだ…という現実に愕然としながら、お母さんが精神的に追い詰められて自殺しないようにと祈るような気持ちで「お弁当プロジェクト」に奔走していました。

その安倍元首相が参議院選挙の応援演説中に銃撃されて亡くなりました。
このような悲劇的な事件が起きて初めて、カルト教団に破壊された家庭で苦しんでいる子どもの存在がクローズアップされ、過酷な子ども時代を過ごした若者への支援態勢が構築されていないことも明らかになりました。
子どもの貧困をなくそうと活動している私たちの現状認識もまだまだ甘かったし、子どもの権利が蹂躙(じゅうりん)される社会が行きつく先をイメージする力も弱かったのです。

参議院選挙では、このような「社会のあり方」が大きな争点にならなかったことも残念です。
それどころか、世界各国でも選挙の度に「外国人・移民排斥」を主張する右翼が一定の支持を得ていることが心配です。

7月、私たちが最も心血を注いだ活動は、ある外国人一家の支援です。
本当に命に関わる事態が発生し、このメルマガをメールで受け取ってくださっている皆さんには7月21日、緊急カンパのお願いをしました。ありがたいことに10日ほどで54件、878,891円のご寄付をいただいています。
月末定期配信のこのメルマガはSNSにも掲載するため個人情報の詳細は省きますが、この一家はいわゆる「外交官特権」の公用ビザを持っているにも関わらず、極度に困窮しているという、非常に珍しいケースです。
貧困と病気が重なり、両親と3人の子ども全員が母国に帰らざるを得ない状況です。日本の私たちの寄付金は、帰国費用と、帰国後の当面の生活、医療のために使ってほしいと思っています。
しかし、3人の子の母親であるMさんが、実は帰国に同意していません。

Mさん家族への私たちの支援は2018年、一家の困窮を見かねた友人が彼らを「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」のこども食堂に連れてきた時から始まりました。
当初、電気ガスを止められ、行政の窓口で「子どもだけでも養護施設に預けてはどうか」と言われたことで「こども食堂のようなところに行くと子どもを取られる」と誤解したMさんは、私たちに心を閉ざしていたのですが、徐々に誤解が解けると明るい笑顔を見せてくれて、自分は働きたいのだと意思表示するようになりました。
公用ビザであるがゆえに、Mさんは就労することができません。昨年の6月以来、Mさんの在留資格を就労可能なものに変更するため、3回、入管に申請しましたが、いずれも不許可となりました。

入管で手続きの書類を揃えているとき、Mさんに「ここにサインして」と促すと、彼女はただ「M」と一文字だけ書いて、これで良いのだと言いました。
外国人のサインにはそういうものもあるのか…と思っていたのですが、弁護士さんに支援に入っていただいてから彼女の生い立ちを聞く機会があり、母国では小学校にもほとんど通わせてもらえなかったこと、養父母の虐待から逃げるように日本にやってきたことを知りました。Mさんは字を書いたことがなかったのです。

いま、Mさんは母国に帰ったら3人の子どもたちも自分と同じような幼少期を送ることになるという「怖れ」にとらわれています。
弁護士さんも、葛飾区役所の方々も、あらゆる手立てを講じて努力してくれています。私たちボランティアも、暑いので文字通り、大汗をかいて支援活動に奔走しています。その全員が「もう帰国以外に道はない」という結論に達しているのですが、Mさんにとってそれは「今まで親切だった日本人に急に見放された」という絶望になりかねない、難しい状況です。
しかしあと1~2ヶ月のうちに帰国が実現しなければ、家族の命を失い、その後の生活の術が失われてしまいます。

もっと時間があれば、Mさんのように「子どものためだったらどんな仕事だって頑張る」という外国人のお母さんを温かく迎え入れられる日本になろうとか、国籍や人種に関わりなく「親と一緒に、守られて育つ」子どもの権利を尊重し、多文化共生、誰も取り残さない持続可能な社会を作ろう――と、大きな政策目標を掲げて世の中に訴えたいです。
でも今は、目の前で震えている親子の命をなんとか繋ぎとめることで精一杯です。

昔流行した失恋の歌がありましたが、「M」という文字を私の心の中で悲しい記憶にしたくないのです。
(代表・緒方美穂子)
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▼Mさん家族への緊急カンパにご協力くださる方は下記の銀行口座にお振込みをお願いいたします。(手数料は申し訳ございませんがご負担ください。)
振込後、金額とお名前をメールでお知らせください。お名前の公表を控えたい方は「匿名希望」とお知らせください。
rainbow_ribbon_mail@yahoo.co.jp
りそな銀行 青戸支店 普通 1554138 特定非営利活動法人レインボーリボン
※レインボーリボンへのご寄付をいただく口座とは別口座です。今回の緊急支援専用の口座です。

▼レインボーリボンの活動を支えるご寄付をお願いいたします。
口座名義:特定非営利活動法人レインボーリボン
 ●郵便振替口座:00170-7-449974
 ●りそな銀行 青戸支店(店番号470)普通預金1520535
 ●ホームページからクレジットカード、コンビニ決済、Pay-easy

支援の方法

NPO法人レインボーリボン
〒125-0062 東京都葛飾区青戸3-33-5-103
電話:080-2838-0641

このメールマガジンは、代表の緒方はじめ、スタッフと名刺交換させていただいた方、
弊団体のイベント・講座にご参加いただいた方にお送りしています。