レインボーリボンメールマガジン 第90号 何があったのか、忘れないで
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第90号
■■ 何があったのか、忘れないで
2021/9/30
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大阪府摂津市で3歳の新村桜利斗(おりと)ちゃんが、母親の交際相手に熱湯をかけられ殺されるという痛ましい虐待死亡事件が、また起きてしまいました。
2018年3月、東京都目黒区で5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃん、
2019年1月、千葉県野田市で10歳の栗原心愛(みあ)ちゃん、
その後も何人もの幼い命が犠牲となる事件が起きる度に、私たちは繰り返します。
「なぜ保護しなかったの?」
「なぜ守れなかったの?」
結愛ちゃん、心愛ちゃん事件の際は当該家族の転居によって行政による見守りが途切れてしまう問題や、母親はDV被害者であり、DVの被害者が子どもに対しては虐待加害者となる構図がクローズアップされました。
行政、児童相談所を責めるだけではなく、周囲の大人、私たち市民が「気づくこと」、「通報すること」の大切さも認識されるようになりました。
統計を取り始めた1990年度は1,101件だった「児童相談所における虐待に関する相談処理件数」は、2003年度には26,569件に、2020年度(速報値)は205,029件と、倍々ではなく、数十倍、数百倍と増えています。
2000年に「児童虐待の防止等に関する法律」が制定され、2004年の改正では市町村など自治体が、子ども虐待の相談窓口となり、児相や警察など関係者間での情報交換や支援策を協議する「要保護児童対策地域協議会」を置くことができるようになりました。
2007年の2回目の児童虐待防止法改正では、「市町村等は、立入調査又は一時保護の実施が適当であると判断した場合には、その旨を児童相談所長等に通知するもの」とされ、地方自治体の役割がより重要視されるようになりました。
このような体制があったにも関わらず、今回の摂津市の事件では、虐待を把握していた市が、児童相談所に一時保護などの強い介入を促さなかったと、市長が記者会見で反省を述べました。
行政に対して「なぜ保護しないのか」「なぜ介入しないのか」と、怒りの世論は大きくなるばかりです。
多くの自治体では虐待相談窓口は「子ども家庭支援センター」という名称なので、略称「子家セン(こかせん)」といいますが、子家センも児相も、「福祉警察」のような役割を世間から期待されるようになっています。
しかし、虐待、DVという家族の中で起きている「暴力」の問題は、時代劇の捕り物のように現場に踏み込んでいって悪者を取り押さえて解決するものではありません。
子家センや児相の職員は、育児や家族関係に悩む親の相談を受け、その背景に失業など「家計のひっ迫」という問題があれば生活保護や職業紹介を担当する部所と連携し、あるいは、病気や障がいの問題があれば医療、福祉部門と連携し、子どもの非行があれば学校、警察、地域ボランティアなどと連携し、あらゆる社会資本を動員して家族に平和を取り戻す支援をしています。
子家センや児相がそのような「支援」を本来の任務とするため、親との信頼関係を壊す「介入」にはなかなか踏み切れず、子どもの命が危機にさらされているようなケースでも「見守り」に終始してしまうという課題もわかってきました。
2020年の3回目の法改正では、児童相談所の体制として、子どもを一時保護する「介入」を行う職員と、親の支援を行う職員を分けました。DV対策を担う機関と児相との連携も強化されました。
それでも悲劇は繰り返される…。
いったいどうすれば良いのでしょうか。
レインボーリボンは小さなNPOです。
東京都葛飾区で、生活圏内の数十世帯にささやかな「食」支援を行なう「フードパントリー」が私たちの主な活動です。コロナ下、「こども食堂」の開催が難しくなり、昨年10月から困窮する子育て家庭に配布する食糧を置くための事務所を借りて、「フードパントリー(食糧倉庫)」としています。
9月もどっぷり緊急事態宣言の下、こども食堂は一度も開催できず、隔週のフードパントリーのみとなりましたが、パントリー開催日以外でも「緊急に食料が必要な人は個別にご連絡ください」と周知しているため、ほぼ毎日、何らかの支援活動をしています。
「子ども支援」や「多文化共生」をミッションとしてNPOを立ち上げたのですが、「困窮支援」という慣れない分野に足を踏み入れ、戸惑うこと、驚くことが多いです。
DV、子ども虐待という「暴力」と、「貧困」との相関関係も目の当たりにしています。
摂津市の虐待死亡事件で、市の担当者が虐待を把握しながら子どもを守ることができなかったのはなぜなのか、詳しいことはわかりませんが、私は自分の目の前で起きていることと、どうしても重ねて考えてしまいます。
例えば「今日、食べるものがない」という人がいたら、私たちは驚き、その人に同情し、自分のできる範囲で何とか助けてあげたいと思います。「明日、住む家がない」というSOSを受けたら、行政の福祉制度で救えないのか、住居を確保する方法を必死に探します。
それが一般市民の感覚です。
でも、行政の担当者はどうでしょうか。
「今日、食べるものがない」と言っているのに、「あなたは生活保護の対象者ではない」「2週間後の家計相談の予約日に来てください」と追い返されたケースには呆れました。
DV被害から逃れて生活している人から、「区の担当者が緊急一時保護は2週間までだから退去するように通告してきて、どうしたら良いか分からない」という相談を受けたこともあります。
もちろん、困っている人がいれば担当する分野を超えてでも助けてくれるような、尊敬する立派な職員の方もいらっしゃいます。
私たちは専門知識も経験も浅い小さなNPOですが、私たちの活動範囲で悲惨な事件が起きないように、いま目の前で何が起きているのかしっかりと見て、そして、それを忘れないようにしようと思います。
(代表・緒方美穂子)
▼葛飾区【若者相談窓口オンライン講演会】生きづらさを抱えたわが子への向き合い方~当事者・経験者とともに考える~
10月16日(土)午後1時30分~午後4時30分 参加無料
Zoomによるオンライン講演会 ※後日、一部をYouTubeで配信します。
講師:大橋 史信氏(一般社団法人 生きづらさインクルーシブデザイン工房 代表理事)
10月8日(金)までにメールでお申し込みください。
「葛飾区若者相談講演会」、住所、氏名(フリガナ)、電話番号を記載のうえ、wakamono@shineikai.or.jp まで。
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【ご参考】さとふる「ワンストップ特例制度」入門ガイド
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