レインボーリボン メールマガジン 第59号「こども食堂は児童虐待防止の切り札になれるか」

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第59号
■■   こども食堂は児童虐待防止の切り札になれるか

2019/2/28
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今月も児童虐待や児童養護施設に関連する悲しい事件が続き、このメルマガを読んでくださる皆さんも心をズキズキと痛めていらっしゃると思います。

なぜ起きてしまったのか、なぜ防げなかったのかと、考え続ける毎日です。

 

昨年12月8日、国会では「成育医療等基本法案」が可決成立しました。

日本医師会、日本産婦人科医会、日本小児科医会などが早くから法制定を提唱し、相次ぐ児童虐待事件を受けて超党派の議員連盟が法案を策定したものです。

成育基本法のポイントは①妊娠期から成人までの切れ目のない医療、教育、福祉の提供②政府は毎年1回、施策の実施状況を公表③保護者や妊産婦の孤立を防ぎ、虐待の予防、早期発見④科学的知見に基づく子育ての知識や食育の普及――などです。

 

お腹の中にいる時から成人するまで大切に、産み育てられること。

親が孤立しないこと。

社会のみんなで子育ち、子育てを支援すること。

そして、こうした政策や社会の雰囲気づくりを実現するために「行政の連携不足、人材の不足」や「社会の無関心や無力感」を克服すること。

目指すべきゴールは示されています。

ゴールに向かって一歩一歩、私たちは前進しているでしょうか。

 

葛飾区には「かつしか子ども若者応援ネットワーク(子若ネット)」、「かつしか子育てネットワーク(子育てネット)」、そして、レインボーリボンが呼びかけて昨年発足した「かつしか子ども食堂・子どもの居場所づくりネットワーク(子ども食堂ネット)」、3つのネットワークがあります。

今月初めに開かれた子若ネットの打ち合わせ会議で、私はやや感情的に仲間の皆さんに訴えたことがあります。

先月、区が区民にパブリックコメントを求めた「子ども・若者計画素案」「いじめ防止対策条例素案」「区後期実施計画素案」についてです。

「子若計画素案」では、「状況に応じたきめ細やかな」「切れ目のない支援」に「関係機関・団体を含んだ地域全体が有機的に連携し」取り組む・・・と、高らかに唱ってはいるものの、その具体策が読み取れませんでした。

計画策定のため、区の子ども応援課は全区的なアンケート調査を行い、区内のこども食堂や学習支援など子どもの居場所事業に取り組んでいるNPOなど民間団体のヒアリング調査も行ったのに、この素案には調査結果が反映されている痕跡がなく、子ども若者支援事業の主体として「こども食堂」の「こ」の字も出てきません。

「いじめ防止条例素案」も具体策がなく、しかも、いじめ防止に取り組む主体として学校、行政以外の我々市民、当事者である子どもが登場しません。

「区後期計画素案」では地域福祉の政策の中に「子ども若者支援」が位置付けられていません。同時期にパブリックコメントを募集した「子若計画」、「いじめ防止条例」、「後期計画」、3つの素案を通して、子ども支援の施策が「全庁的な連携はもとより、関係機関・団体を含んだ地域全体が有機的に連携する体制を構築」(子若計画素案の文言)するものとして見えてこないのです。

 

昨年6月に厚労省が都道府県など行政機関に出した「子ども食堂の活用に関する連携・協力の推進及び子ども食堂の運営上留意すべき事項の周知について(通知)」においては、こども食堂は「困難を抱える子どもたちを含め、様々な子どもたちに対し、食育や貴重な団らん、地域における居場所確保の機会を提供している」と位置づけ、「子ども食堂の意義について、行政のほか、子ども食堂を取り巻く地域の住民、福祉関係者及び教育関係者等が、運営者と認識を共有しながら、その活動について、積極的な連携・協力を図ることが重要」と述べています。

http://www2.shakyo.or.jp/zenminjiren/pdf/topics/kodomo_shokudo.pdf

 

この通知の精神に沿った施策を具体的に展開している事例がお隣の江戸川区にあります。

江戸川区の子ども家庭部児童女性課成長支援係は社会福祉協議会と連携し、地域包括ケアシステムの拠点でもこども食堂を開催するなど、現在22カ所でこども食堂が開催されています。また教育委員会と連携し、全小中学校に「こども食堂マップ」を配布しています。

こども食堂への補助金支給だけでなく、社協への寄付金を活用し、こども食堂ネットワークのウェブサイトを開設しました。

また、支援が必要な家庭に有償ボランティアが出向き、調理などを行う「おうち食堂」の取り組み、区内の仕出し弁当組合との協働で非課税世帯対象に手作りお弁当を100円で届ける「KODOMOごはん便」などは、直接的には食事支援でありながら、困難家庭の孤立防止、虐待の早期発見対応など、福祉行政との有機的連携の好事例だと思います。

 

かつしか子ども食堂ネットは昨年の連続学習会に江戸川区の係長さんを講師に招き、こうした取り組みを学びました。その学習会には、葛飾区の子ども応援課の方も参加してくれていたのに・・・。

私の訴えに、子若ネットの仲間の皆さんが「区の計画について勉強会を開こう」と共鳴してくださいました。

そして偶然にもこのタイミングで、子育てネットの大先輩から来年度の区の「子ども子育て会議」委員に私を推薦してくださるとのお話をいただきました。

子ども食堂ネットでは今、来年度の活動方針を話し合っている最中です。

3つのネットワークで私たち民間の経験と知恵を結集して、区行政に反映させたいと思います。

 

今月は10日に、こども食堂ネットワークと豊島子どもWAKUWAKUネットワーク主催の、年に1度の「こども食堂サミット2019」、14日に日本生活協同組合連合会主催の「子どもの未来アクション活動交流会」、23日にかつしか子若ネット主催の「発達の気になる子どもの支援」講座、24日に首都圏のこども食堂運営者有志による勉強会「子どもの困りごとに出会ったとき」があって、いつにも増して学びの機会がたくさんありました。

 

そのすべてを通して学んだことは、まず、こども食堂は子どもの困りごとにいち早く気づける場であるということ。

自分の子育て期が通り過ぎてしまうと子どものことに関心を失ってしまうばかりか、自分がかつて子どもだったことさえ忘れてしまいがちだけれど、こども食堂はそんな大人がもう一度、子どもに出会う場でもあります。(これは「こども食堂サミット」での近藤博子さんの言葉)

そこで発見した子どもの困りごとを、行政の専門機関につなぐことができた事例はたくさんあります。

また、学校の先生やスクールソーシャルワーカーなど専門家が、地域の我々と協働しようという姿勢を持ってくれれば、最悪の事態に至る前に、子どもやその家族をみんなで少しずつ手を添えて支えることができるのです。

 

子どもの未来アクション交流会は東京会場と大阪会場を中継でつないで行われましたが、大阪市の生活保護ケースワーカーさんが、問題を抱えた世帯について、地域での子どもの見守りに熱心な民生委員さんの働きかけで要保護児童対策地域協議会(要対協)を開いた経験を発表してくれました。

要対協は虐待や非行などの個人情報を扱うため、児童相談所、生活保護ワーカー、警察など、限られた行政の担当者のみで行われる会議ですが、大阪のように民間の力を活用している事例もあるのです。

 

「発達の気になる子どもの支援」講師は以前にも講演をお願いしたことのある「のぞみ発達クリニック」の黒田未来さんでした。

発達障害は「障害」と表現しますが、もしかしたら「世の中の多数派とはちょっと違う」というだけのことかもしれません。それに、多くの人にはできないことができる、優れた能力として発現することもある「定型的ではない発達の仕方」なのかもしれません。まさに「個性」そのものではないでしょうか。

また、「障害」とは、本人の身体的内面的な「困りごと」という側面だけではなく、社会の側がその人を排除しようとしている「壁」という側面もあります。

 

私たちレインボーリボンのこども食堂には発達障害の子どもたちもたくさん来てくれています。

いま、一人ひとりの顔を思い浮かべると、本当にかわいい、個性あふれる、大好きな子どもたちです。

 

こども食堂がもっと増えて、学校や行政と連携することができれば、児童虐待の防止、早期発見のための有効な仕組みになり得ると、私は思います。

(代表・緒方美穂子)

 

▼かつしかでやろう!子ども食堂・居場所作り・学習支援大作戦

https://kyoudou.city.katsushika.lg.jp/?p=8801

3月17日(日)13:30~16:30

会場:葛飾区亀有地区センターホール(葛飾区亀有3-26-1 リリオ館7階)

参加費:無料

子ども食堂、子どもの居場所、学習支援の運営者から設立・運営のノウハウを学び、ミニ交流会で交流。レインボーリボンの緒方も登壇します。

申し込みフォーム:https://ssl.form-mailer.jp/fms/93d4a375602186

主催:社会福祉法人葛飾区社会福祉協議会

 

▼レインボーリボンへのご寄付がホームページからもできるようになりました。

http://rainbow-ribbon-net.org/entry/

子どもに提供する1食分の食材費300円を1口として、12口3600円の寄付(こども食堂の1食オーナー)を募っています。

口座名義:特定非営利活動法人レインボーリボン

  • 郵便振替口座:00170-7-449974
  • りそな銀行 青戸支店(店番号470)普通預金1520535

ご寄付くださった方はお名前、連絡先を下記レインボーリボン宛てにお知らせください。

「レインボーリボンのこども食堂通信」へのご芳名記載の諾否もお知らせいただけますと幸いです。