レインボーリボン メールマガジン 第65号 「夏休みお弁当プロジェクト」無事、ミッション完了!
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第65号
■■ 「夏休みお弁当プロジェクト」無事、ミッション完了!
2019/8/31
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レインボーリボンの1ヵ月の活動報告と、代表・緒方の思いを伝えるメールマガジンです。
8月はまず、「夏休みお弁当プロジェクト」が無事、ミッション完了したことを報告いたします。
レインボーリボンは葛飾区でこども食堂を始めて4年目となりますが、子どもたちが抱えている「困難」がだんだん見えてきて、学校給食のない長期休み、食べることに困っている子どもが現実にいるということを知りました。3月の春休みは子どものSOSを受けて何回「緊急出動」したか分かりません。
長い夏休みはどうなってしまうのかと案じていたところ、なんと、赤い羽根募金の東京都共同募金会が「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」をカルピスで有名なアサヒ飲料の「こどもたちの明るい未来づくり基金」に推薦してくださるというお話があり、今回のプロジェクトが実現しました。
最終的には9世帯24人に、夏休みの平日29日間、580個のお弁当を届けました。
異常なほどの猛暑で、配送ボランティアさんの健康管理、お弁当の衛生管理が本当に心配でした。
プロジェクト進行中の日々、美味しくて栄養満点のお弁当を食べている子どもたちの姿を想像しながら、私自身、疲れた時はビタミンカラーの野菜が欲しくなったり、お肉がこんなに美味しいものだったのかと思ったり、改めて、口から入るものが自分を作っているんだなあと実感しました。
私の子ども時代、家は決して裕福ではありませんでしたが、母がなるべく農薬や添加物の入っていない食材を手に入れて、愛情を込めて料理してくれていたんだなあとか、親戚や近所の大人が困ったときは助け合って子どもを育ててくれていたんだなあと、改めて感謝の気持ちで一杯になりました。
この気持ちは私にとって「お弁当プロジェクト」からの思わぬプレゼントでした。
暑い中、自転車でお弁当を配送してくれたボランティアさんたちにもドラマがありました。
今回、配送1日につき2000円の有償ボランティアを募集しました。
ある人は、区役所の自立相談窓口で紹介された就労先に出かけようとしたけれど、以前の職場での苦い経験からどうしても行くことができず、泣きながら窓口にやってきたそうです。そこで窓口の職員が付き添って、その日のお弁当配送の自転車をこぎ出しました。自転車をこいでいるうちにだんだん元気になって、配送を終えたときには「プロジェクトの皆さんにお礼が言いたい。明日は仕事に行く」と、笑顔になっていたそうです。
自立相談窓口のスタッフは、「相談者はお弁当プロジェクトの配送ボランティアから帰ってくると元気になっている」と、驚いていたそうです。
昨日、すべての配送を終えたボランティアの皆さんと、届けたものと同じお弁当とアサヒ飲料様から寄贈されたカルピス、三ツ矢サイダーをいただきながら、ささやかな慰労反省会を開きました。
皆さんから出た感想は、雨や暑さの過酷な天候で、思った以上に重量のあるお弁当を、待っている家庭に早く届けようと気が急きながら、1時間も自転車をこぎ続けることはやはりたいへんだったということ、そして、玄関でお弁当を受け取った人が笑顔で「ありがとう」と言ってくれることが本当に嬉しかったということでした。
お弁当を受け取ったある家庭から、嬉しいメッセージももらいました。
「先月からの長い間、幸せを運んで来てくださった方々に心から感謝しています。雨の日もレインコートを着て配達してくださったり、お弁当は美味しいし、ありがたい限りでした」。
この方は最初はお弁当を受け取る時間に起きられるかどうか不安だったそうですが、お弁当がとても美味しかったので毎日楽しみに待つようになったそうです。家計も助かり、子どもたちを連れて映画を観に行くことができたということでした。
お弁当製造を引き受けてくださった障がい者就労支援施設、お弁当屋さん、配送体制を支えてくださった区役所自立相談窓口の皆さん、助成金申請やプロジェクト運営に力を合わせてくれたネットワークの仲間の皆さんのおかげで、初めての試みを成功裏に終えることができました。
「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」として地域に「食のセイフティーネット」を作りたいという構想を抱いてきましたが、まさかこんなに早く一歩を踏み出せるとは思っていませんでした。
「食」の面だけでなく、学校がお休みで家族を見守る目が少なくなる時期に、ふだんの信頼関係があるこども食堂の運営者が配送ボランティアと一緒に玄関先まで訪ねていくことができる仕組みでもあります。
この先、冬休み、そしてまた春休み、今回の反省点もふまえて継続できたらいいなと思っています。
この他、8月のトピックスとしては、夏の「お出かけこども食堂」で世界的なIT企業「オラクル」にお世話になりました。
ひきこもりがちな子どもも、夏と冬のオラクルへのお出かけだけは楽しみに参加してくれたり、電車での行き帰りにふだんのこども食堂では見せない顔を見せてくれたり、本当にありがたい企画です。
オラクル・ボランティアの責任者、川向緑(かわむかい みどり)さんは企業のCSR(社会貢献)部門の第一人者です。
すごく大きな企業で大きな事業を推進していらっしゃる方なのに、レインボーリボンのような小さな団体の小さな取り組みに直接足を運んで、一人ひとりの子どもの顔をよく見て、「〇〇くんはこういう特性がある?じゃあ、こういうふうにしよう」と的確な行動のお手本を見せてくださるような方です。
こども食堂を始めなかったらこんな偉い人には一生、出会えなかったろうなあと思います。こんな出会いも私にとっては思わぬプレゼントです。
何事も、人との出会いが活動の原点ですね。
今月は、葛飾区で20年以上の実績がある「子どもを犯罪から守るまちづくり活動推進会」の皆さんに呼んでいただき、NPO法人と子どもの人権についてお話させていただきました。
「子どもを犯罪から守るまちづくり活動推進会」の皆さんとはもちろん、今までもいろいろな場面で一緒に行動してきました。
葛飾区で子ども支援の活動をしてきた私たちの原点には、葛飾区役所の生涯学習課で私たちを励まし続けてくれた小菅哲朗さんとの出会いがあったのです。
小菅さんは6年前の8月15日、あまりにも早く急逝されてしまいましたが、小菅さんの同僚、後輩の皆さんが今も私たち民間団体の活動をしっかりとサポートしてくださっています。
活動を始めた最初の出会いが小菅さんという、絶対的に味方になって動いてくれる区役所の方だったので、葛飾区役所は私にとってずっと心強い、頼もしい存在でした。
しかし今月は、2日に区の「子ども・子育て会議」があり、区行政に対する失望で始まった月でもありました。
来年度から5か年の「第二期葛飾区子ども・子育て支援事業計画」の体系案を一目見て、最初は「まさか」という驚きでした。5年前に策定された最初の計画体系と一言一句違わない、まさに「コピペ」だったのです。
私たち民間の活動家が現場で見ていることを、どうしたら行政に反映できるのだろう・・・。
実は「お弁当プロジェクト」は、保健所の行政指導には収まらない活動でした。
弁当製造はすでに営業許可を受けている施設にお願いするとしても、配送事業にも保健所の許可が必要で、その許可を得るためには製造した場所からいったんどこかにお弁当を集めて、そこから配送に出発しなければならないという、現実には衛生管理のリスクが高まる形態を指導されたためです。
集配施設や配送車を準備する資金もありませんでした。
保健所の窓口で相談しながら、このままではプロジェクトは発進できない、食事を摂れない子どもが放っておかれると思ったら、私は涙が出てしまいました。親に面倒を見てもらっていない子どもが「自分の命が嫌い」「死にたい」と言っているということもお話しました。
窓口対応した担当者の方の目にも光るものが見えました。指導内容を変えるわけにはいかないけれど、どうしたら良いのか、解決策を一緒に考えてくれました。
行政に対してひとくくりに「公務員だからやる気がない」「現場を知らない」と突き放すつもりはまったくありません。
これからもきっと、困難を乗り越えるパワーをプレゼントしてくれる「人との出会い」があることを信じて、来月も頑張ります。
(代表・緒方美穂子)