レインボーリボン メールマガジン 第98号 私たちは「貧困」の底にある「孤立」に抗う
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第98号
■■ 私たちは「貧困」の底にある「孤立」に抗う
2022/5/31
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。
5月は今年度の活動を本格始動させるために、過去を振り返る機会が多い月でした。
最大のイベントは一昨日、NPO法人として年に1回開催する「総会」でした。
と言っても、レインボーリボンの総会出席者はほぼ全員が10数年来のママ友で、「議長は誰にする?」で始まる「おしゃべり会」のようなものです。
コロナの影響で2年間はオンラインや、短時間の報告で終わらせてきましたが、今年は顔を合わせての総会。昨年度の事業報告、決算報告、今年度の活動方針、今後どんな活動をするか、じっくりと懇談することができました。
こども食堂、フードパントリーの活動はこの2年間、悩み、迷いながら、本当に必要とされる人に届く活動を模索し、今は、第1・第3土曜日はフードパントリー、第2・第4土曜日は「あおとこども食堂」という形に落ち着いています。
今月、あるオンライン・ミーティングで「子どもの貧困」について、活動を通して見えてきたことを発表する機会があり、2016年4月に「パルこども食堂」を始めた頃のこと、その年の11月から「あおとこども食堂」をオープンし、翌年の12月からは「よみかき宿題こどもカフェ@なぎ」を始めたという、これまでの経験を振り返りました。
「パルこども食堂」は「子どもの貧困」という社会課題に関心をもって始めたのですが、当時は「貧困な子どもなんて、いったいどこにいるんだろう?」「自分の身の周りには見当たらない」という浅い認識しかなくて、無神経な対応で子どもの心を傷つけてしまったこともあります。
「貧困」とは単に貧乏ということではないんだ、と本当の意味で気がついたのは、「よみかき宿題こどもカフェ@なぎ」の経験を通してでした。
「あおとこども食堂」は誰でも来られるオープンな子どもの居場所でしたが、その中で少数の、困難を抱えていると思われる子どもの家庭に声をかけ、少人数限定の無料学習支援を提供したのが「よみかき宿題こどもカフェ@なぎ」でした。
「なぎ」のご飯を何杯もお替わりする子に「朝から何にも食べてないの?」と聞くと、「水おかゆ食べました。おいしいですよ、水おかゆ!」という答えが返ってきました。
親は子どもに食事を用意してくれるもの、朝は学校に遅れないように起こしてくれるもの、という「あたりまえ」だと思っていた家庭像が当てはまらないおうちがあることを知りました。
親の精神的な不安定さのために、無邪気に友だちと遊ぶこともできず、夜はお風呂に入って寝る、朝起きて学校に行く、という普通の生活リズムを保つことさえ難しい子もいました。
生活保護をはじめとする福祉制度にカバーされていて、「貧困」が目に見えはしないけれど、「貧困の連鎖」の中で文化的な豊かさが欠落してしまった家庭で、子どもは「自分は大切な存在だ」とあたりまえには思えない環境で生活していること、自分の可能性を信じて、能力を磨いて成長していくためにはあまりにも厳しい道のりがあるのだという、「子どもの貧困」の実相を知りました。
そして、コロナ時代の到来。「見えない貧困」が見えてしまった時代です。
「子どもの貧困なんて、この豊かな日本に本当にあるの?」という声はもう聞かれません。
たくさんの方がレインボーリボンのフードパントリー、こども食堂に寄付を寄せてくださいます。マスコミの取材も受けました。
レインボーリボンは世間に注目され、社会的な責任も大きくなりました。
今回の総会は第8回定期総会でした。
2014年4月にNPO法人を設立したときは「10年がんばろう」と約束したのですから、あと2年です。
しかし、あと2年で私たちの社会的責任は果たせるのでしょうか。
そもそも、レインボーリボンはどんな社会的責任を果たそうとしたのか。
私たちは「PTAを誇り高いボランティア活動にしよう」というミッションの下に集まった仲間です。
普通の主婦や、普通の働くママがPTA活動を通して「多文化共生」の楽しさに気がついた実体験を共有しています。
当時、目の前にいた外国ルーツの親子、障がいのある人、文化的な背景のちがう人たちとの人間的な交流を出発点として始めた活動ですが、NPOとしての8年間を振り返ると、「子どもの貧困」という大きな社会課題に関わりながら、いつも原点に戻ってくるのは、やはり目の前にいる子どもたち、親たちとの人間的なふれあいです。
「貧困問題」の最も深部にあるものが「孤立」だからかもしれません。
PTAで「おせっかい活動」を始めたときの初心は、外国人のお母さんを孤立させないことでした。
いま、国でも「子どもの貧困」「孤立」対策が様々議論されていますが、こうした課題の最も現実的な、有効な解決策は、日本全国のPTAを元気にすることではないでしょうか。
PTAのミッションは「子どもの幸せのために親と先生が力を合わせること」。そのミッション遂行のために、民主的に、自発的に、楽しく活動することで、大人も人間として成長できる…こんな簡単な、単純な主張は10年も頑張れば日本全国に波及するにちがいないと信じていたのですが…。
あと2年で「ミッション・コンプリート」とは、とても言えそうもない現実を前に、改めて、とりかかり始めてしまった課題の大きさ、底深さを思い知らされています。
(代表・緒方美穂子)
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