レインボーリボン メールマガジン 第127号 目の前にいる子ども・若者の尊厳

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第127号
■■   目の前にいる子ども・若者の尊厳
  2024/10/31
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東京都葛飾区を拠点とするNPO法人レインボーリボンの活動報告、代表の緒方の思いをお伝えするメールマガジンを毎月、月末にお届けしています。

今月は残念な報告から…。
8月のメルマガに書いた「PTAイノベーション応援サイトを作りたい」という事業助成金申請の審査結果が届き、昨年の別の財団への申請に続き、またもや落選でした。

子どもたちに最も近い社会教育団体、非営利団体であるPTAが、「こどもの貧困」に向き合い、困難を抱える子どもたち、親たちに寄り添う活動団体となる、そんなイノベーションの波を起こしたい…という狙いはともかく、「応援サイトを作る」という手法が評価を得られないのかもしれません。

ネット上での情報発信はとても便利ですが、現実の社会活動、課題解決にはなかなか結びつかないという弱点もあります。
特に「子ども」という、日々成長の途上にある存在を相手にしようという活動であれば、目の前にいる子どもたち、親たちの具体的な生活を脇に置いておいて、ネットの世界で知らない人とのやりとりをいくら熱心に行っても、結局は上滑りの議論にしかならないのかもしれません。

レインボーリボンの活動の中で、こども食堂とフードパントリーの実践が多くの人から寄付やボランティア参加という形で共感をいただけている理由は、やはり、目の前にいる子どもたち、親たちと直接関わり合える活動形態、手法だからなのでしょう。

私たち自身、こども食堂やフードパントリーで出会う子どもたち、親たちからいろいろなことを学び、自ら楽しみながら成長できていると感じています。
教育や福祉の分野で何の公的資格も持たない素人の私でも、10年もこのような活動をしていると、身についてきた「視点」があります。

運動会の競技スタートを知らせるピストルの音が怖くて泣き出してしまった子を見ると、「トラウマを抱えているのかもしれない」と思います。
あまりにも礼儀正しい立派な態度の子を見ると、「この子は駄々をこねたり、甘えたり、子どもらしい生活を送れていないのかもしれない」と心配になります。
ある団体に食料援助を求めて来た若者がまともに字を書けなかったという話を聞くと、障がいがあるのか、あるいは、学校に通うこともままならない逆境にいるのかもしれないと思います。

そう思うだけで、具体的に助けてあげられるケースはごくわずかですが、それでもそうした「視点」がないと子どもの心を傷つけてしまったり、児童虐待を見過ごしてしまったり、適切な支援につなげられなかったりします。
そうした「視点」は、目の前にいる一人ひとりと「尊厳ある人間」として誠実に向き合うこと、ネットや書籍、メディアなど、あらゆる機会をとらえて学び続けることでしか得られないと思います。

何十年もの経験があるベテラン活動家であっても、世間に名の知れた知識人であっても、学び続けることを止めてしまったら、そして目の前に現れた人を見下す気持ちが生じてしまったら、その人はもう活動を引退した方が良いのです。
子どもに対する「大人」、居場所や食料支援を求める人に対する「支援者」が、相手の尊厳を傷つけたとき、どれほど深刻な心の傷を与えてしまうのか、その責任は自覚しなくてはなりません。

総選挙の翌日、29日の閣議で政府は2024年版の自殺対策白書を決定しました。
23年の小中高生の自殺者数は過去最多となった前年(514人)と同水準の513人に高止まりしたとのことです。
子どもが自殺するようなことがない社会を、私たちは作っていきたい。

NPO法人自殺対策支援センター「ライフリンク」は今月15日に設立20周年を迎え、これまでの歩みをドキュメンタリーとして映像化するためのクラウドファンディングに挑戦しています。
https://readyfor.jp/projects/lifelink-2024
自殺が「個人の問題」とされ、何の対策も講じられていなかった20年前に、代表の清水康之さんが「こんな状況は絶対におかしい、絶対に変えてやる」と決意して活動を立ち上げ、「自殺対策の法制化」を目指して10万筆の手書き署名を集め、全国47都道府県で「地域自殺対策トップセミナー」を開催(厚生労働省等と共催)し、365日24時間休まずに相談を受ける体制(SNS相談「生きづらびっと」、電話相談「#いのちSOS」)を整え、そうした相談窓口が連日パンク状態になっていることや、特に子どもや若者の中には支援を必要としていても直接相談することに抵抗感を持っている人が少なくないことを踏まえて、新たにオンラインの居場所活動「かくれてしまえばいいのです」
https://kakurega.lifelink.or.jp/
も始めたといいます。

代表の清水さんの言葉にハッとしました。
「私は医者でも弁護士でもありません。労働問題や福祉の専門家でもなく、ただのテレビディレクター、言ってみれば、“自殺対策の素人”でした。でもだからこそ、専門分野の枠や常識にとらわれることなく、市民の感覚で自殺の問題にニュートラルに向き合うことができた。素人だけでは何もできませんから、何かやろうとする際は常に、それをできる誰かとの連携を模索することになる。いのちを守るためにつながること。それを愚直に続けてきた20年だったように思います。」

ライフリンクのクラウドファンディングは既に目標額の300万円を集めています。
レインボーリボンが落選した助成金も300万円。
彼我のちがいを比べてみれば、代表の思いの強さ、活動量の多さ、活動内容の丁寧さ、未来に向けた構想力、すべてにおいて納得です。助成金審査に落ちたくらいで嘆いていた我が身が恥ずかしい。

気を取り直して、こども食堂やフードパントリーの活動が子どもの命と尊厳を輝かせるものとなるように、活動の在り方を考え続け、学び続け、また、「いじめ防止」も「PTAイノベーション」もあきらめずに方法を模索していきたいと思います。
(代表・緒方美穂子)

3歳児がこども食堂に「お土産!」と持って来てくれたドングリ


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