レインボーリボン メールマガジン 第136号 「日本人ファースト」で、本当にいいのか?

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第136号
■■   「日本人ファースト」で、本当にいいのか?
  2025/7/31
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東京都葛飾区を拠点とするNPO法人レインボーリボンの活動報告、代表の緒方の思いをお伝えするメールマガジンを毎月、月末にお届けしています。

7月は参議院選挙がありました。
NPO法人は特定の候補者や政党を支持することも、反対することも法律で禁じられています。
しかし今回の選挙で「日本人ファースト」という政治的主張に拍手喝采を送った人、その政党に共感して票を入れた人と、もしも平和的に話し合う機会があれば、聞いてみたいのです。
本当にそれがあなたの気持ち、あなたの意思ですか?と。

その政党の代表は選挙中は「選挙の間だけのキャッチコピーで、終わったら差別を助長するようなことはしません」と言っていました。選挙が終わってから「外国人特権なんて、日本にはありませんよ」と言っていました。
あなたはいったい何に共感し、どんな政治を期待して一票を入れたのですか?

私たちレインボーリボンは「多文化共生の子育ち・子育て環境をつくる」ことを目指して活動しています。
小学校のPTA活動をしている中で、子どもが学校から持ち帰るお手紙を理解できない外国人のお母さんが「あのお母さんは全然連絡がとれない」「子どもは忘れ物ばかり」「困ったお母さん」と批判され、差別され、孤立させられている姿を目の当たりにしました。
同じクラスの日本人ママが「明日の持ち物は〇〇だよ」と一言、電話してあげればいいじゃない?と、「おせっかい運動」を始めたのが私たちの活動の原点です。

「どんなことに困っていますか?」と話しただけで、外国人のお母さんたちは心を開いてくれて、PTA活動に協力してくれました。
外国人のお母さんだけではありません。おそらく全国どこにでも存在する「独特な地域事情」、「暗黙のルール」に馴染めない、他の地域から引っ越して来た人も、多文化共生をめざす私たちの仲間になってくれました。
聴覚障がいのあるお母さんは手話文化の素敵な風を、PTAに吹き込んでくれました。

レインボーリボンの「レインボー」は7色の個性、多様性。
「リボン」は横につながる連帯の絆と、子どもたちの未来につなぐ平和と希望の伝言です。

「伝言」というよりは、「信託」かもしれません。
自分と違う言葉を話す人、自分と違う価値観の人を受け容れて、理解しようと努力して、助け合うための行動を起こしたら、自分自身が幸せになるよ。みんなが幸せな環境をつくることができるよ。

政治学者の中島岳志さんの著書『自分ごとの政治学』(NHK出版)の冒頭にこうあります。
「政治とは、『簡単には分かり合えない多様な他者とともに、何とか社会を続けていく方法の模索』である」。
そうすると、レインボーリボンがやっていることも、立派な「政治」と言えるのかもしれません。

同書は「右」とか「左」とか、「保守」「リベラル」など、政治を語るときによく使われる言葉が、実は非常に間違った使い方をされていると分かりやすく解説してくれていて、また、今の時代に合った政治のとらえ方を示してくれています。
中島さんの解説によれば、政治家や政党の立ち位置、その国の政治状況を知るためには、「お金」と「価値」で考えると分かりやすいと言います。
詳しくは省きますが、一つ、中島さんが指摘している事実として、いわゆる「先進国」の中で日本は税金が安く、国家が国民のために使うお金も小さく、人口あたりの公務員数も少ない、「小さすぎる政府」であるということがあります。
地震や台風などの被災地で、つい数年前の新型コロナ流行時のパニック状態で、行政による救援がいかに遅く、薄いか、的を射ていないか、私たちは嫌と言うほど経験しています。
病気や障がい、失業、老齢など、誰もが負っているリスクは「自己責任」とされ、福祉によるセーフティーネットは「穴が開いている」と、誰もがあきらめています。

今回の選挙では当初、物価高への対応が最大の争点だと目されていました。
「給付か減税か」が争点だと思われていたのですが、選挙戦の後半ではそれよりも「外国人」というテーマが大きくなっていました。
経済的に苦境に立たされた国民が、外国人を仮想敵に「日本人ファースト」という扇動に乗ってしまったのか、それとも政治に無関心だった人々がネット世論の盛り上がりから現実世界でも勢力を拡大している政党の「勢い」に一時的に熱狂したのか…。
いずれにしても、お金の使い方として「小さい政府」で良いのか、「大きい政府」を目指すのか、といった議論はまったくありませんでした。

「価値」の視点からの議論も、ほとんどありませんでした。
互いの思想や価値観の自由を保障する「リベラル(自由主義)」の立場から、例えば「選択的夫婦別姓」の法制化を進めるのか、逆に、強者が弱者の内面や生き方にまで介入する「パターナル(父権主義)」の立場から「別姓」や「同性婚」を認めないのか、といった議論はまったく埋没していました。

そして、この異常な「暑さ」です。
地球温暖化をどうするのか、エネルギー問題は、食糧問題は…。
政治はまさに「自分ごと」です。

私が『自分ごとの政治学』で最も感銘を受けたのは、最終章の「死者とともに生きていく」という小節です。
「死者」とは先人のことです。私がいま、こうして自由に考えを表現できるのも、選挙で投票できるのも、過去に生きた人々が私たちに信託してくれた「基本的人権」「国民主権」「平和」という政治的財産を享受しているからだと思うのです。
いま私たちが「子どもの貧困」解消のために、「子どもへの暴力」根絶のために、「子どもの権利」実現のために、一生懸命働いているのは、きっと自分の命が終わった後も、未来を生きる人たちとともにずっと生きていたいという、極めて「自分ファースト」の欲求からなのかもしれません。

(代表・緒方美穂子)

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