レインボーリボン メールマガジン 第143号 バックラッシュに立ち向かう時

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第143号
■■   バックラッシュに立ち向かう時
  2026/2/28
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東京都葛飾区を拠点とするNPO法人レインボーリボンの活動報告、代表の緒方の思いをお伝えするメールマガジンを毎月、月末にお届けしています。

戦後初めて政権与党が単独で衆議院議席の3分の2を超え、野党第一党は内閣不信任案を提出できる議席数を失った2月、今から4年間、衆議院解散はないと思われます。
4年後というと、レインボーリボンは15周年。
その頃、私たちは何を目指し、どんな活動をしているのでしょうか。

2月末日の今日は第4土曜日で、こども食堂の開催日なのですが、その前に私は同じ葛飾区のNPO法人SIENの「15周年記念講演会」に出かける予定です。
NPO法人SIENは、精神障がいのある人が住みなれた地域で安心して暮らすための支援をしている団体です。
http://www.npo-sien.org/
同法人が精神障がい者の居場所として運営している「地域活動支援センターなぎ」で、私たちは2017年12月から「よみかき宿題こどもカフェ@なぎ」を開催していました。
コロナ禍のために閉鎖した2020年3月まで、精神障がいを抱えた「なぎ」の利用者さんたちも、我々のこども食堂にボランティア参加してくれていました。
コロナ禍以降、レインボーリボンは困窮家庭に食料を配布するフードパントリーを始め、うつ病や不安障害など、メンタル不調に悩むお母さんたちを支える活動が増えました。
「なぎ」の職員さんに相談したり、「なぎ」の利用者が経済的に困窮してしまったときにフードパントリーを利用したり、繋がりは今も続いています。

その15周年記念講演会の講師は谷川彩莉さん。
https://tngw0914.wixsite.com/mysite

「幼い頃から抱いていた性別への違和感や葛藤の経験をもとに、身体は女性のまま生きていくことを決意し、ありのままの自分や他人を受け入れる大切さを伝える活動をしている。
LGBTを理解して頂くという考えではなく、性に限らず誰一人として同じ人間はいないということに視点を置いている」。

「精神障がい者支援」と「性の多様性理解」が結びつかない方もいらっしゃると思いますが、「ありのままの自分や他人を受け入れる」という生き方が、私たち、子どもの権利実現を目指す活動家も含め、「誰ひとり取り残さない社会」を目指す活動家に共通するビジョンなのだと思います。

同時に、SIENの15周年記念講演のテーマがこれだということに、時代は「誰ひとり取り残さない社会」に向かって確実に進んでいるのだと確信もします。
レインボーリボンがPTA研修の講師を引き受け始めた10数年前、ある人から「LGBTなど性的少数者は自分の違和感を誰にも相談できず、孤立し、自殺に追い込まれるリスクも高い。子どもの人権に関する講演の中で、一言でいいからこの問題に触れてほしい」と言われたことを思い出します。
当時は体の性と心の性が一致しない「性同一性障害」という捉え方が一般的で、「珍しい」「かわいそう」あるいは「気持ち悪い」といった、強い差別意識が世の中に蔓延していました。
ところが今は、性自認(心の性)も性的指向(誰を好きになるか)も十人十色であって、「自分らしく生きる」権利は誰にでもあたりまえにあるのだと語られるようになっています。

今月初め、千葉県の公立小学校で実施した「いじめ防止教室」で、2007年カナダで誕生した「ピンクシャツデー」運動を紹介しました。
ピンクのシャツを着て登校した男の子がいじめられたことに怒った学生が、「男も女も、みんなでピンクのシャツを着よう」と呼びかけた出来事をきっかけに、毎年2月の最終水曜日、ピンクのシャツを着て「いじめ反対」の意思表示をしようという運動が世界中に広がっています。
千葉の小学5年生の教室で「みんなはどう思う?男の子がピンクのシャツを着たらおかしいと思う?」と尋ねてみました。
すると、ほぼ全員が「思わな~い」と答えてくれました。「多様性~」という声も聞こえました。

2007年のカナダではピンクのシャツは「男らしくない」と思われていたのです。
日本はもっとひどいものでした。
「男は仕事、女は家事育児」といった性別役割分業意識(ジェンダー意識)が強かった昭和の時代から、フェミニズム運動が「女も男も、仕事も家庭も」と意識改革を促し、男女雇用機会均等法や男性の育児休業制度、母体保護法の成立等、女性の「権利」や「自由」、「自己決定権」を主張しながら、女性も男性も生きやすい社会の実現を牽引してきました。
しかし、平成に入って10年ほど経った2000年代初頭、男女平等、男女共同参画社会への進展を後戻りさせるバックラッシュの嵐が吹き荒れました。

統一教会の『世界日報』が2002年頃から「ジェンダーフリー教育」バッシングを始め、2005年、「自民党過激な性教育・ジェンダーフリー性教育調査検討プロジェクトチーム」(安倍晋三座長、山谷えり子事務局長)が発足。
人に見せたり見られたリしてはいけないプライベートパーツ(水着で隠す体の部分)や、望まない妊娠や性感染症を防ぐためのコンドームについて授業で教えることは「過激な性教育」であると大キャンペーンが張られ、学校現場は萎縮していきます。

その時代から四半世紀が過ぎた今月、レインボーリボンとしてではありませんが、地域の青少年育成団体として、思春期の子どもを持つ親向けの性教育講座を開催しました。その講座の講師がおっしゃっていたのは、「女の子が安心して初潮を、男の子が安心して精通を迎えられるように、科学的知識を子どもたちに伝えています」ということでした。
「性教育はエロスではない。科学である」ということです。
いま、「妊娠の経過は取り扱わない」といった学習指導要領の歯止め規定を撤廃しようという声が強くなっています。
https://www.asahi.com/articles/ASTCW1JH9TCWUTIL00RM.html?msockid=1a98c5b8da9a65fc2f90d571db536419

四半世紀前、知識人は「不安こそは、すべてのバックラッシュ現象の背後にあるもの」と指摘していました。(宮台真司『バックラッシュ!なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?』双風舎)
社会に取り残される不安を抱えた人々が、社会に守られているかのように見える人々(例えば「女性」、「生活保護受給者」等)に猜疑心を抱き、その抑うつ気分を吹き飛ばすような「断固!決然!」と叫ぶ「小泉旋風」に吸引され、結果、個人の自由、権利を重視する「リベラル」を叩くという社会現象です。

社会に取り残される不安を抱えた人々…いま、最も危険水域にいるのは選挙権を持たない子どもたちではないかと思います。
2025年の自殺者数(暫定値)が公表され、全体は1万9097人と初めて2万人を下回り、過去最少となりました。一方、小中高生の自殺者数は532人で、過去最多でした。
心と体が大きく変化する成長期にあって、自分についての科学的知識もなく、大人から評価されずにありのままでいられる居場所もなく、少子高齢化でこれからの世代は負担が増えるという漠然とした将来像しかイメージできないのだとしたら、誰だって不安を抱えるのが当たり前です。
子どもたちの不安を取り除くためには、どうしたら良いのでしょうか。

バックラッシュが再び起きるかもしれないこれから4年間、小さなNPOの小さな一歩であっても、「誰ひとり取り残さない社会」に向けての歩みを止めないよう、がんばろうと思います。

                                   (代表・緒方美穂子)

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