レインボーリボン メールマガジン 第68号 「どうした、どうした」
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第68号
■■ 「どうした、どうした」
2019/11/30
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レインボーリボンの1ヵ月の活動報告と、代表・緒方の思いを伝えるメールマガジンです。
今月は「3」がつく節目が3つ、ありました。
まず、2016年11月にオープンしたレインボーリボンの「あおとこども食堂」が3周年を迎えました。
これを記念して、「こども食堂ボランティア・スタッフも【ONEチーム】に!」と銘打ったボランティア交流会を開催しました。
もちろん、ラグビー日本代表の多文化共生にあやかったタイトルです。
外国人かどうか、障がいがあるかないか、金持ちかそうでないか、いろいろな「違い」を心の壁にするのではなくて、チームとしての「強み」にしようという意味を込めました。
レインボーリボンのこども食堂は3カ所でそれぞれ月に1回開催なので、この日初めて顔を合わせる人も多かったのですが、まずは調理スタッフが用意してくれたお洒落な軽食とお茶で温まり、それから少し体を動かしながら、声を出さずにコミュニケーションをとったり、一度に複数の人の声を聞き分けるゲームを楽しみました。
その後、3つの子ども食堂のどこでどんなボランティアをしているのか、ボランティアを通して感じたこと、意見、今後への希望などを自己紹介形式で話し合いました。
1回の交流会で「ONEチーム」になれたわけではありませんが、こども食堂は我々ボランティアにとっても大事な「居場所」です。
「我々が笑顔でいられなければ、子どもも笑顔になれない。疲れたら休んでも良いし、こうでなければならないという『べき』論はやめて、楽しくボランティアを続けていきたい」という、ある人の発言がみんなの気持ちを表していたと思います。
私たちは子どもの笑顔のために活動しています。
子どもの「顔」、様子をよく観察して、もしも笑顔が消えていたら「どうした、どうした」とお節介をやこうという活動が、こども食堂です。
今月は1989年11月20日に国連総会で「子どもの権利条約」が採択されてから30年目の節目でした。
日本が「子どもの権利条約」を批准したのは1994年。
遅かったこともですが、政府による日本語訳も「条約の精神を汲み取っていない」と批判されました。
私が一番疑問に思うのは、子どもの意見表明権を保障する12条1項の政府訳です。
原文英文
Article 12
1. States Parties shall assure to the child who is capable of forming his or her own views the right to express those views freely in all matters affecting the child, the views of the child being given due weight in accordance with the age and maturity of the child.(太字は緒方)
「児童の権利に関する条約」(政府訳)
第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
「given due weight」を「相応に考慮される」と訳しています。
民間団体である国際教育法研究会訳「子どもの権利条約」では
第12条 (意見表明権)
1. 締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、正当に重視される。
「正当に重視される」と訳しています。
英文で「意見」が「opinion」ではなく「view」であることに着目する専門家もいます。
言葉で表現される「意見」よりももっと広い意味で、それぞれの発達段階に合った表現方法で示す様相、例えば赤ん坊の泣き声も含まれるといった捉え方です。
DCI日本(国連との協議資格を持つ、子どもの権利のためのNGO)は12条を「呼びかけ、向き合ってもらう権利」と解説しています。
子どもは自分と関係のあるすべてのことについて、自分流のやり方で思いや願い、気持ちを表明する権利がある、そして大人はその意見にていねいに応答する義務があるという解釈です。
日本政府が12条で謳われている「子どもの権利」をいかに軽視しているかは、条約採択から30年後の今月、来年度の大学入学共通テストで導入しようとしていた英語の民間試験を土壇場になってようやく延期するという醜態によって明らかになりました。
住んでいる地域や家庭の経済状態によって受験機会に格差が生まれる民間試験導入に反対する若者の声は、ずいぶん前から高校生たちによる「国会デモ」などの形で表明されていたのに、文科省、政府は一顧だにしてこなかったのです。
そもそも、「教育改革」はいつの間に「入試改革」にすり替えられたのでしょうか。
国連「子どもの権利委員会」は2010年の日本政府の報告審査において次のように警告しています。
「本委員会は、貴締約国が教育を重要視し、その結果極めて高い識字率を誇っていることに留意するものの、極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもが発達上の障害にさらされていること、および、教育制度が極度に競争的である結果、余暇、スポーツ活動および休息が欠如していることを懸念する」と。さらに、不登校の数が膨大であること、体罰、いじめなど、学校における重大な暴力にも懸念を表明しています。
今月、レインボーリボンに小学6年生の4時間の授業時間を預けてくれたある学校での「いじめ防止教室」が、最終回を迎えました。
いじめの加害者について、子どもたちの意見を聞いていた授業でのことです。
あるグループが描いた「いじめっ子」のイメージは、キラキラ輝いている女の子でした。その子は社長の娘で、毎日、塾に通っているというのです。
「この子は中学受験をさせられるんだね。そのストレスで友だちをいじめてるんだ」
私も一緒にイメージを膨らませます。
「塾での成績が落ちたらご飯抜きだよって、親から虐待を受けているかもしれないね」
大げさな口調でそう言った時、私は教室から笑いが起こるのではないかと思っていました。ところが、私が目の当たりにした「view」は、真っ直ぐに私を見上げ、小さく頷く子どもたちの真剣な顔でした。
笑いごとじゃないんだ・・・。胸を突かれました。
児童虐待防止月間でもあった11月、福岡県で1歳の子が親にエアガンで撃たれた事件が発覚し、また、千葉県野田市で栗原心愛ちゃんが虐待死した事件の第三者検証委が報告書をまとめました。
児童相談所など行政の体制整備、法律改正が進められています。
しかし、作家の天童荒太さんは「虐待が起きた後の対処にすぎない」「上流でダムが決壊しているのに、下流で土囊(どのう)を積んでいるに等しい」と批判しています。
天童さんの小説『永遠の仔』は、虐待の被害者が主人公でありながら、虐待をする側、大人の心理描写も際立っています。
大人のストレスが子どもへの虐待という暴力につながっている構造が描かれています。
天童さんは絵本の原作も書いています。
友だちの顔に青い痣を見つけ、その悲しそうな顔を放っておけずに「どーした、どーした」と、どこまでも追究する小学3年生の男の子のストーリー、『どーしたどーした』です。
11月、最後の「3」がつく節目は、ベルリンの壁崩壊から30年でした。
東西の人を分断していた壁が崩壊し、自由で民主的な、平和な世界が実現すると思っていたのに、30年経ってみると自国第一主義、排他主義、差別、暴力が世界を席巻しています。
しかし、こども食堂やいじめ防止教室で「view」をよく見て、時には「どうした、どうした」と具体的に動いていけば、希望を捨てることはありません。
ストレスに満ちた世界を変える、子どもも大人も大らかに笑っている世界をつくる、私たちがその担い手になっている、小さいけれど確かな手応えがあるからです。
(代表・緒方美穂子)
▼前号のメールマガジンでご紹介した「第1回全国こども宅食サミット」の報告記事が主催の「こども宅食応援団」WEBサイトで公開されました。
親子のつらいを見逃さない社会へ!第一回こども宅食サミット開催しました!
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