レインボーリボン メールマガジン 第102号 権利とお金

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第102号
■■   権利とお金
  2022/9/30
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。

7月以来、「Mさん」への支援活動に明け暮れる日々で、9月も毎日、誰かと連絡をとったり、手続きのための資料を集めたり、助けてくれる組織を探したり…という日々でした。

Mさんはアフリカのある国で生まれました。1週間後の10月5日、夫と3人の子どもと一緒にその国に帰ります。
一家の帰国を実現するために、たくさんの人が大変な労力と時間を費やしてくださいました。
レインボーリボンとしても帰国費用と帰国後の生活再建に充てるため、このメルマガをメールで受け取ってくださっている皆さんと「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」のメーリングリストに寄付を呼びかけさせていただきました。
寄付金は9月末、121万5561円となりました。本当に信じられない額です。
一家とは縁もゆかりもない方からの送金がほとんどです。日々、積みあがっていく金額を記録しながら、故・中村哲先生の言葉が甦ります。(中村哲先生は30年にわたってアフガニスタンの貧しい人々のための医療、水路建設に取り組んだ医師です。)
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」

7月のメルマガに書いたとおり、Mさんは故国で過酷な子ども時代を送った人です。
その国に帰ることがどんなに辛いことか、泣きながら話してくれました。体に残る虐待の痕も見せてくれました。
それでも今回は家族全員のビザが切れてしまうため、10年近く暮らした日本を離れ、新たな出発をしなければなりません。
過去を乗り越えて、子どもたちの将来のために頑張ろうと、何度も話し合いました。

しかし、具体的に帰国準備を進めていくと、Mさんが受けた「虐待」や「差別」は、彼女の「能力」という面に最も大きなダメージを与えているのだと分かってきました。
自分が置かれている状況や条件、選択肢について、情報を整理することができない。
そのため、取るべき行動について決断ができない。
何よりも、お金の管理、運用ができないということ。
集まった寄付金を渡して、成田空港で見送れば、私たちの支援活動はある程度落ち着くものと思っていましたが、それだけではとても彼女と子どもたちの生活は成り立たないということが分かりました。

では、どうしたら良いのか。いま、まだ様々な選択肢を探し、連絡をとり、仲間と話し合い、模索している最中です。

ノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさんが9月19日、国連教育サミットで演説しました。
アフガニスタンではタリバン政権が、女の子が中学高校にあたる学校に通うことを認めていません。
ウクライナや中東、アフリカなどの国々では、戦争、組織的暴力のため、子どもたちが学ぶ機会を奪われています。
アジア、中南米でも、貧困問題と相まって、特に女の子は教育よりも労働や結婚を強いられています。

女性にも教育を受ける権利があります。この権利を行使できなければ、お金があっても生きていけないのだということを、Mさんを見て痛感しています。
お金の管理など、生きていくために必要な手段だけではなく、自分には権利があるのだという人間として当たり前の感覚、自己肯定感も、人間として尊重され、継続して学びとっていかなければ、自立して生きていくことはできないのです。

「子どもの権利」を最も早く提唱し、社会に根付かせてきた北欧の国々では、「権利」の対語は「義務」ではなく、「責任」だと聞いたことがあります。
自らの権利を行使してこそ、他者に対しても、自分の人生にも責任をもてるのだと思います。

安倍元首相を銃撃した山上容疑者は、食べるものもないほどの困窮した子ども時代だったといいます。
秋葉原通り魔事件、京王線車内で「ジョーカー」の服を着て乗客を襲った事件など、「ローンウルフ(一匹狼)型」犯罪者の動機として、社会的孤立、孤独が問題視されています。
家庭の崩壊や社会生活における人間関係の破綻など、「うまくいかない」「生きづらい」状態が、他人も巻き込んで自分の人生も終わりにしたいという「拡大自殺」につながっているのだと。

そのような悲劇の連鎖を断ち切るためには、子どもの権利の実現が絶対に必要だと思います。
子どもの権利条約(1989年に国連で採択され、日本も署名・批准済み)第2条「差別の禁止」「人種や肌の色、性別、言葉や信じる神様、着ている服や食べ物、考え方や意見が違っても、どんな国や家に生まれても、財産があってもなくても、心身に不自由があったとしても、どんな差別も許しません」(東海教育研究所『はじめまして、子どもの権利条約』より 以下同じ)
第22条「国で暮らせなくなった子どもたちを守り、助ける約束」
第23条「障害のある子どもたちが幸せに生きていけるように」
第28条「誰もが教育を受け、学ぶことができる権利」

条約は締約国の義務を定めたものですが、こうして条文の理念を並べてみると、Mさん支援を通して一般市民の私たちが子どもの権利条約の実現に努力してきたことを確認できて、私自身、こども食堂や子どもの居場所をつくる活動に関わっていることを心から誇りに思います。

こうした活動だけではなく、例えば消費者として、「児童労働」をはじめ、他者の権利侵害の上に生産される商品は買わないこと、
例えば有権者として、他国との戦争に至る道を煽る政治家を選ばないこと、
例えば地域の生活者として、親の都合で食べたいものを食べられない、遊びたいときに遊べない、成長する権利を奪われている子どもを見逃さないこと、
できることをすべてしていきたいと思います。
(代表・緒方美穂子)

▼子どもの権利に関する連続講座 第1回「遊びの中で権利を実感する」
葛飾区の「かつしか子育てネットワーク」「かつしか子ども若者応援ネットワーク」「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」の「3つのネットワークの会」が連続講座を実施します。
第1回は10月23日(日)10時~12時、葛飾区男女平等推進センター
講師:北島尚志さん(表現活動クリエーター、聖心女子大学非常勤講師、子どもの権利条約31条委員会世話人)
参加無料、申込み問い合わせ先:NPO法人かつしか子ども劇場 kogeki.katusika@gmail.com

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