レインボーリボン メールマガジン 第69号 遺志ではなく、こころに生きる中村哲先生の意志として
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第69号
■■ 遺志ではなく、こころに生きる中村哲先生の意志として
2019/12/31
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このメルマガは、毎月月末にレインボーリボンの活動報告をお届けするために、法人化した2014年から配信を始めました。
毎年、大晦日のメルマガは「未来日記」を書いて、何年か後のレインボーリボンの姿を「夢」として描いてきました。
しかし2015年の大晦日は、1年を振り返ることがあまりにも辛く、未来への希望を失いかけて、「夢」を語ることができませんでした。
その時に『灯台を見失わず「居場所」と「希望」に至る旅を』と題して書いたメルマガでは、今月4日にアフガニスタンで銃撃され亡くなられた中村哲医師を「心の灯台」にしたいと書きました。
私は中村医師を支援するための組織「ペシャワール会」の長年の会員で、中村先生の大ファンなので、テレビのニュースで一報を聞いた時には凍りついてしまい、それから平常心を保つために、先生が亡くなったことをなるべく考えないようにしてきました。
今、ようやく月の始めの新聞から読み進み、九州福岡にあるペシャワール会事務局に訃報が届いたその日に発送準備をしていたという「ペシャワール会報142号」の封を開け、家に何冊かある著作のページをめくっています。
すると「大ファン」を自認しているわりには、私の理解が非常に浅かったことに気がつきました。
先生は20年も前から、アフガニスタンを襲った大干ばつが地球温暖化の影響であると警鐘を鳴らし続け、この地の沙漠化を止め、命の水を確保する事業、PMS(ペシャワール会医療サービス)の緑の大地計画が「国際政治や環境・経済問題にとどまらず、大きくは人間と自然のかかわりから人類の文明に至るまで、様々な意味で、示唆を与える」と予言されていたのです。
2000年夏、アフガニスタン、パキスタン、イラン、イラク、モンゴル、中国西部、北朝鮮、北部インドと広大な地域を大干ばつが襲っていた時、地球規模で「自然の復讐」が起きているという警告は、日本ではほとんど聞かれませんでした。
中村医師は、PMSの診療所に村人が長蛇の列をなす光景を見て、赤痢の大流行、その原因が飲料水の欠乏にあると気がつきました。さっそく水源確保の事業に着手し、日本のペシャワール会事務局では干ばつ情報を収集し始めましたが、日本政府はサミットで外国首脳の歓迎に忙しく、マスコミは大干ばつへの関心がなく、英語の達者な事務局員がインターネットの英文サイトを検索するしかなかったそうです。(『医者井戸を掘る』石風社)
私はアフガニスタンという小国に対して1979年にはソ連が軍事侵攻、2001年にはアメリカが「対テロ戦争」として大規模な空爆を行うという、戦争の悲惨さにばかり目を奪われ、米軍の誤爆を受けながらも「彼らは殺すために空を飛び、我々は生きるために地面を掘る」と、灌漑事業を続ける中村先生を英雄視していました。
しかし、先生の功績は、先生自身が「戦争どころではない」と言ったとおり、そこに止まらないものでした。
7日、カブールの空港で中村医師のひつぎを担いだアフガニスタンのガニ大統領は、2カ月前の10月7日、大統領官邸で行われた「アフガニスタン・イスラム共和国市民証」授与式で5分間もの長い抱擁で中村医師を迎え、PMS「緑の大地計画」を何度も熟読したと述べ、「これがアフガニスタン復興のカギだ」と称賛したそうです。
今年9月、アフガン人のPMS現地職員らがペシャワール会の研修を受けに来日した際、外務省を表敬訪問し、「我々がPMS方式を採用して取水設備を建設していけば、アフガニスタンの貧困はなくなり、現地は安全になり戦争がなくなります」と述べたそうです。
PMS方式とは、現地で調達できる資機材を使い、針金の蛇篭に石を詰め、護岸のために柳を植え、現地の人々が毎年、補修、維持管理できる農業用水路の作り方です。
中村先生は重機の操縦、土木技術は独学し、日本の江戸時代からの伝統工法に着想を得て、建築作業には地元の、農業ができなければ傭兵となって戦争に出かけざるを得ない住民に賃金を払いながら、共に汗をかきました。
中村医師は1984年にハンセン病撲滅プロジェクトでパキスタンのペシャワール・ミッション病院に赴任。アフガニスタンの山岳無医村に診療所を建て続け、2000年からは1600本の井戸を掘り、2003年から用水路の建設にとりかかりました。16500ヘクタールの農地が蘇り(山手線内側の2・6倍)、15万人の難民が帰還したそうです。
常に現場にあって、現地の人々の命と生活を守るために必要な活動を、タイミングを逃さず、現地の伝統と習慣、宗教、人びとの誇りを尊重しながら、何の見返りも求めずに35年間、続けてきました。
国連や大きな国際NGO、日本政府や国会議員が現場を知らないこと、知らずに机上の理論で無益な「政治」を振りかざすことを鋭く批判してきました。
日本の世論が日本人の命には敏感に反応しながら、アフガン人が何人死のうと無関心でいることにも怒っていました。
ペシャワール会はNPO法人でさえありません。制度による制約や、手続きを経るための時間ロスとは無縁に、中村医師が必要とする資金、資材、情報を素早く確保するためだけに献身するボランティア団体です。緑の大地計画のために日本国内で数億円の寄付を集めたそうです。
「ペシャワール会報142号」とともに送られてきた村上優会長の「会員の皆様へ」には次の文がありました。
「こころを振り絞ってお伝えしたいことは次のことです。
第1に、ペシャワール会は中村哲先生の意志を守り事業継続に全力を挙げます。どうぞご支援ください。遺志ではなく今もこころの中で生きておられる中村哲先生の意志として。
第2に、この事態を前に、中村哲先生がいつもされていたように、少し遠い先を見て、決して後ろを向かぬよう、前を向いて歩みます。」
心の中の中村先生と対話しながら、少し先の「夢」を語ろう。
レインボーリボンを法人化した2014年の暮れ、大志を抱いて書いたメルマガを読み返してみると、この時もやはり、ペシャワールで起きた惨事を起点として将来のビジョンを描いていました。
PTAのイノベーション、国境を超えた助け合い、本当にできるのかな、私たちに。
2014年に描いた10年後の夢をかなえるまで、あと4年しかありません。
(代表・緒方美穂子)
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