レインボーリボンメールマガジン 第74号 学校閉鎖は「コロナ禍」ではなく、「政治禍」では?

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第74号
■■   学校閉鎖は「コロナ禍」ではなく、「政治禍」では?
  2020/5/31
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毎月月末、レインボーリボンの活動報告と代表・緒方の思いをお届けするメールマガジンです。

今月のビッグニュースは、NHKの「おはよう日本」で我々のお弁当プロジェクトを紹介してもらったことです。
(下記URLは動画ではなく、記事です。)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200529/k10012449051000.html
放送直後から「テレビを見て感動したので寄付したい」というありがたい申し出があり、一方では無言電話の着信が何時間も鳴り続け、良くも悪くもテレビの影響力の大きさを感じました。

4月27日に厚労省から「子どもの見守り強化アクションプラン」についての通達が出されたことから、NHK首都圏放送センターは今回の取材を始めたそうです。
https://www.mhlw.go.jp/content/000625822.pdf
「現下の行政機関の保健部門を中心とする新型コロナウィルス感染症対応の状況にも鑑み、地域の見守り体制については、民間団体も含めて、地域の様々な機関・団体等に幅広く協力を求め、地域で力をあわせ、協働して取り組んでいく必要がある」としています。

学校や行政の目が届きにくくなる状況下で、お弁当プロジェクトは一般の私たちが子どもや親の安全を見守る手段にもなるのです。
実際、昨年の夏休み、ある家庭に「異変」が起きているのではないかという情報があったのですが、行政ではすぐに対応できず、翌日お弁当を届けて子どもの無事を確認できたということもありました。

こども食堂のお弁当プロジェクトは、直接的には、長期休みに栄養のある食事を摂れない子どものために始めましたが、届けているのは「食事」だけではなく、他者とつながっている「安心感」でもあると思います。
今回の取材に協力してくれたシングルマザーも「食べるものもない状況だったので、助けを求めていなければ誰にも気づかれず、イライラを募らせて悩み、虐待とかをしてしまったかもしれません」と話してくれました。

今回のお弁当プロジェクトは区内4つの飲食店、お弁当屋さんに協力していただき、利用者が直接お店に取りに行くか、あるいはお店から配達してもらう形ですが、テレビでは玄関先で「食べてますか?」と明るく声をかける飲食店の方の姿も印象的でした。
感染防止のため、ボランティアによる配送を中止した時は忸怩たる思いでしたが、4つのお店の方々がそれぞれ子どもと仲良くなっていたり、こちらからお願いしている以上の支援をしてくださったり、結果として「地域で見守る目が増えた」状況で、プラスの良い面もありました。

非常事態宣言が解除され、東京都も来月から学校再開となります。
3月5日、かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワークとして始め、4月20日からレインボーリボンに引き継いだお弁当プロジェクトは、6月7日に終了します。
かつしかネットワークとしては15世帯43人対象に、レインボーリボンとしては9世帯25人対象に、お弁当配布数は延べ2280個ほどになる見込みです。

今はこども食堂を徐々に再開していくために、第一段階としてフードパントリー(食糧貯蔵庫、ひとり親家庭などに無料で食糧を渡す取組み)と、長い休校期間中に溜まった親子のストレスを吐き出せる「お話コーナー」を準備中です。

一区切りついた段階で振り返ってみると、改めて「怒り」の感情とともに沸き上がる疑問があります。
2月27日の安倍首相による突然の全国一斉休校は、子どもたちを感染から守ったのでしょうか。社会的な感染爆発を防いだのでしょうか。
日本小児科学会は5月20日、「COVID-19流行に学校閉鎖がどの程度有効であるのか(中略)効果は少なく、一方、医療従事者も子どもの世話のために仕事を休まざるを得なくなることから、医療資源の損失によるCOVID-19死亡数が増加」しているとする「知見」を発表しました。
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=342

この「小児の新型コロナウィルス感染症に関する医学的知見の現状」では、「子どものCOVID-19関連被害」として、「子どもは多くの場合、親から感染しているが、幸いほとんどの症例は軽症である。しかし、COVID-19流行に伴う社会の変化の中で様々な被害を被っている」として、
「学校閉鎖は子どもたちの教育の機会を奪い、子どもを抑うつ傾向・情緒障害に陥らせている」
「学校給食やこども食堂の食事で食い繋いでいた貧困家庭の子どもが食生活に困窮する」
「福祉の援助が十分に行き届かない中で、親子ともストレスが増大するため、家庭内暴力や子ども虐待のリスクが高まる」
などの点を指摘しています。

私たちの仲間うちでも「ふだんは学校嫌いの子が、学校に行きたいと泣き叫んでいる」という話を聞きました。「子どもの感情や生活が荒れると、親も精神的に不安定になってしまう」と、辛そうでした。

学校閉鎖は子どもにとっては「コロナ禍」ではなく、「政治禍」だったのではないでしょうか。
政治家に影響力を持たない「子ども」という存在が、政治家の存在アピールに利用されたのではないでしょうか。
「人々の自由、権利を制限する」という理由で非常事態宣言の発動は躊躇されていましたが、それよりも1ヵ月も早く、「子どもの権利」は易々と、一番最初に制限されました。
第2波がきたら、また簡単に「子どもの居場所」は取り上げられるのでしょうか。
そんなことが許されるのでしょうか。

冒頭で紹介した厚労省通達のとおり、「民間団体も含めて、地域の様々な機関・団体等に幅広く協力を求め、地域で力をあわせ、協働して取り組んでいく」体制を今すぐ作り、第2波に備えるべきだと思います。
学校や公共施設が場所を開けてくれれば、私たち民間ボランティアは見守り活動に参加できます。

国会で審議中の第二次補正予算案では、要保護の子どもに対して子ども食堂などの民間団体が見守り活動を行うための経費にも国の補助金がつくようです。
こうした国の方針を、実際に目の前にいる子どもの福祉につながる「仕組み」に練り上げるのは自治体の仕事です。子どもの、あるいは子育て家庭の困窮はコロナ禍の前からあった問題ですが、このピンチをチャンスに、すべての子どもが、親が、誰も取り残されない社会を作る気概を、ぜひ地方自治体には持ってほしいものです。

レインボーリボンは正会員23人の、本当に小さな、蟻んこのようなNPOなのですが、今月はNHKで取り上げてもらったり、「パルシック」という象のように偉大なNPO法人のオンライン集会で発言させていただいたり、国連大学の方のインタビューを受けたり、正に身に余る光栄を感じています。
地元の葛飾区内からも、遠いところからも、引き続きたくさんのご寄付をいただいています。
蟻んこが地面を一生懸命這いずり回って、弱っている蟻んこ仲間を助けようとしている姿に皆さんの共感をいただけているようです。
テレビで配達されるお弁当を見て、「私のカンパがあのお弁当の一部になっていると思うと嬉しい」とメッセージをくれた友人もいました。

今月はこうした「いい話」で終わろうかなと思ったのですが、やはり触れずにはいられないのは、冒頭の無言電話です。数時間の間、着信のタイミングは機械的なものではなく、何回目かの着信では一瞬、携帯電話番号が表示されたのですが、すぐに切って、また「番号非通知」で何度も何度も電話を鳴らし続けたのです。
貧困問題に長く関わってきたベテラン活動家の方に話したところ、「それは嫉妬だと思う」と言われました。「テレビに映る人は恵まれているように見えるから、自分はこんなに大変なのに誰にも気づかれずに取り残されている・・・って、メンタルが壊れちゃうんだよ」と。
確かに、ひっきりなしに鳴り響く電話のベルは、誰かの悲鳴のようにも聞こえました。

蟻んこの非力さも噛みしめながら、来月はNPO法人としての年次総会も開かなければ。
                         (代表・緒方美穂子)

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