レインボーリボン メールマガジン 第96号 私たちは「親」という「当事者」

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第96号
■■   私たちは「親」という「当事者」
  2022/3/31
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。

レインボーリボンは学校や官公庁にそろえて4月始まりの年度で運営しているので、今日は年度末です。
コロナ禍は第6波がまだ終わっていないとも、すぐに第7波が来るとも言われている状況ですが、「緊急お弁当プロジェクト」で幕を開けた2020年度から 2年が過ぎようとしている今、緊急的、代替的に取り組んできたこの間の活動を、少し冷静になって振り返るタイミングともなっています。

コロナ前の2019年度、レインボーリボンは年間の活動費が120万円ほどの小さなNPOだったのですが、突然のコロナ禍に柔軟に対応して新しい取り組みを続けた結果、たくさんの寄付金や助成金もいただき、2020年度には4倍の480万円規模の事業を行っていました。
今年度、2021年度はどうだったかというと、270万円くらいの事業費を支出し、寄付金・助成金は550万円くらいの収入となる見込みです。
今年度は収入が支出を上回っていますが、コロナ緊急対応の中でフードパントリーの拠点となる事務所を借り始めたため、家賃をいつまで払い続けられるのか…、今年度までは特別に増額されている助成金も来年度はなくなる可能性があり、お金の心配は尽きません。

活動の内容としては、フードパントリーを始めたことが最も大きな変化でした。
食料を無料で配布するフードパントリーという活動に以前から関心はありましたが、「困窮者支援」「貧困対策」という意味合いが強く感じられ、私たちが取り組むべき課題なのか、取り組みたいというモチベーションが自分の中に本当にあるのか、迷いがありました。
こども食堂は、「子どもの貧困」という課題に関心をもって取り組み始めた活動ではありますが、子どもたちの居場所づくり、成長を見守る温かい地域の交流が主眼でした。実際に運営してみると、決して「貧困」という枠には収まらない多様な問題が見えてきましたし、逆に、子どもとふれあうことで私たちが癒されたり、勇気づけられたり、単純にとても楽しかったり…、奥深い人生の経験となってきました。
だからこそ、こども食堂の延長でフードパントリーに取り組むことには抵抗感がありました。
しかし、コロナ禍によって、そんなことは言っていられなくなったわけです。

パントリーを始めた当初、2020年6月には9世帯21人に向けた支援だったものが、第3波で2度目の緊急事態宣言が出された21年1月にはおよそ30世帯80人に膨れ上がり、その後も利用者の入れ替わりはあるものの、ずっとこの規模で推移しています。
感染拡大の波が来る度に、こども食堂は中止せざるを得ず、感染状況に関わらず定期的に開催できるフードパントリーの方が安定した運営ができている状態です。

今月、フードパントリーの利用者に来年度も登録更新を望むかどうか、Lineアンケートをとりました。
① お子さんの人数と、2022年度におけるそれぞれの年齢
② フードパントリーを利用したい理由(経済的な理由)例:月収〇〇円等、具体的にお書きください。
③ 経済的理由以外に特段のご事情がありましたら、お書きください。
④ 今までフードパントリーを利用して良かったこと、悪かったこと等、レインボーリボンへのご意見ご感想をお書きください。
――という4項目です。

① は、18歳未満の子どもがいる家庭をパントリーの対象としているための確認ですが、②以降の事情次第で、18歳を過ぎたからといって一律「対象外」とはしません。
② の答えは、やはり「相対的貧困ライン」と言われている月収10.2万円前後の方が圧倒的に多く、中にはまったくの無収入という人や、生活保護受給中という方もいます。
③ で特に目立ったのは、シングルマザーとして一人で子育てしている人たちの病気や障がいに関する記述です。また、夫や親からの暴力を受けてきた経験を告白してくれる方もいました。
④ では「自分自身は精神や体が弱いので、お弁当をいただける日は家事が軽減され休息できて、子どもも栄養がとれて本当に助かっている」、「経済的にかなり助かっています。食料品も月に数千円は浮かすことができて、その分子どもたちの洋服代や習い事に使えています」といった感謝の声を寄せてくれる方がとても多く、「悪かったことはありません」と添えてくれる言葉が胸にしみます。
また、「ボランティアの方々にお会いできるのが嬉しい。一人ぼっちじゃないんだと感じられるから」、「フードやお弁当を取りに行くとき、温かく対応していただき、嬉しいです」、「スタッフの方々の努力を見ていると気力が湧く」といったコメントは、私たちボランティアへの何よりの「報酬」です。

一方、経済的に困ってはいるのだろうけれども、無料の食料を渡し続けることが果たして子どもの福祉につながるのかどうか、疑問に思う家庭もあります。
家に持ち帰った食品は机の上に置いておき、食べたい人が食べる、家族で食事をすることはない――という話を聞くと、我々の活動が「孤食」やネグレクトを助長してしまっているのではないかとさえ思います。
その家庭については新年度の登録更新は保留とさせてもらいましたが、当面は持ち帰った食材で毎日、子どもの朝食を用意することを条件に、支援を続けることにしました。
「支援者」が「利用者」に条件をつけて良いのかどうか分かりませんが、「支援者」である前に、「子どもの親」としてどうしても見過ごすことができませんでした。

今年度のフードパントリーは26回開催し、開催日以外にも区役所の福祉関連の職員やスクールソーシャルワーカーへの物資提供、緊急に支援が必要な人への配達を行い、延べ759世帯、2130人に食料やオムツ、衛生用品などを届けました。
数よりも大事なことは、私たちが利用者に信頼され、寄付してくださる方々にきちんと報告できる活動を続けているということです。
フードパントリーは、こども食堂の開催が難しい状況下で緊急避難的に始めた活動ではありますが、計らずもPTA活動から生まれたレインボーリボンの原点、「親同士が助け合おう」という理念に最も沿った活動ともなりました。
私たちは「支援者」というよりも、「親」という「当事者」なのです。

新年度も、コロナ禍が収束するまではフードパントリーとこども食堂を継続していくつもりです。

最後に、ロシアの侵略によって犠牲となっているウクライナの親たち、子どもたち、ロシア軍に従軍させられている若者たちのために、戦争反対、平和を希求する意志を、皆さんと共有したいと思います。
この危機に乗じて評論を始めた「当事者ではない者」に惑わされることがあってはならないと思います。
安全な社会、持続可能な未来の「当事者」は私たちです。「核兵器廃絶」は私たちの願いです。
(代表・緒方美穂子)

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