レインボーリボン メールマガジン 第83号 「その命 自分ひとりの命じゃないよ」

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第83号
■■   その命 自分ひとりの命じゃないよ
  2021/2/28
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毎月月末、レインボーリボンの活動報告と代表・緒方の思いをお届けするメールマガジンです。

2月も先月に続き、毎週土曜日、事務所でフードパントリーを開きました。
スタッフ側も利用者側もだんだん慣れてきて、お互いに週末が少し楽しみになってきています。
子ども食堂の広い会場で遊んだりお喋りしたりする濃いコミュニケーションに比べれば、滞在時間わずか数分間、食品や日用品を受け渡すだけのふれあいですが、それでもだんだん「顔見知り」になり、笑顔も増え、先月から初めてレインボーリボンと繋がり始めたお母さんたちも、ご自身のことや家族のことを話してくださるようになってきています。

レインボーリボンのフードパントリーは子育て家庭であれば誰でも利用できます。条件、証明書は必要ありません。
それでは困窮していなくても図々しく食料を持って行く人もいるのではないか、他の団体や行政の支援も受けているのに二重三重に支援を受けようとする人も来てしまうのではないか…と、思われるかもしれません。
つい最近、他の団体の方がフードパントリー利用者にアンケートを取ったそうで、「○○さんは特に困窮していないそうですよ」と教えてくれたのですが、複数の団体のパントリーに食料を受け取りに行くお母さんが「困っていますか?」と聞かれて「いえ、特には」と答えたからといって、そうか、困窮していないんだ、とは、私には思えません。
「△△のパントリーはひとり親家庭の証明書が必要なので、友人は行けないんです。まだ離婚が成立していないので」という方もいます。また、「次回は私、名前が変わります。1年越しで離婚できたので」と嬉しそうに報告してくださる方もいらっしゃいました。
生活保護を受けていてコロナ前よりも収入が減ったわけではないけれど、やっぱり生活保護だけでは苦しいという人もいらっしゃいます。が、子どものこと、友人のこと、健康に関する心配事などを繰り返し話していく姿を見ると、モノが欲しいというよりは、私たちボランティアに会いに来ているんだろうな、と思います。
親御さんたちが私たちを信頼してくれて、フードパントリーを利用してくれることに誇りを感じます。

コロナ禍の1年、子どもと女性の自殺がとても増えたそうです。
昨日のフードパントリーでは、葛飾区在住の木版画家、大野隆司さんの作品を、《つらくてもだめだよ。その命 自分ひとりの命じゃないよ》という大野さんの言葉を添えながら、利用者の皆さんにお渡ししました。大野さんご本人と地元の定時制高校の先生が寄贈してくださったものです。
私たちのパントリーは自殺防止の力になれているかどうか分かりませんが、「あなたは一人じゃないよ、応援しているよ」というメッセージを精一杯、これからも届け続けたいと思います。

とはいえ、パントリーは子ども食堂に比べて何倍もの資金、寄付が必要で、それに、やはり子どもたちとほとんど会えないことが寂しい限りです。
3月には東京でも緊急事態宣言が解除され、子ども食堂が再開できることを祈るばかりです。

また、2月はそろそろ年度末の決算が迫り、ずっとサボってきた会計処理に追われながら、来年度以降の活動計画を考え始める時期でもあります。
レインボーリボンの事業費は2019年度までは120万円ほどだったのですが、この1年で3~4倍の支出をしています。寄付金は昨年の倍以上、財団などからの助成金も400万円以上確保できる見込みです。
コロナ禍という災害によって膨れ上がった予算規模を、来年度以降どのようにコントロールしていくのか、ある意味、岐路に立たされています。

シロウトのお母さん集団として、地域ボランティアを活動の軸としてきた今までの延長線では担いきれない役割を、今、すでに負ってしまっている気がします。
しかし、コロナ前に地道なボランティア活動が社会的に評価され、団体としてはある程度軌道に乗っていたのに、その地点に戻るのではなくて、新たな役割、社会的責任を負っていこう…とは、なかなか決心がつかず、私にしては珍しく、「迷い」の中にいる日々です。

2月はオリンピック・パラリンピック組織委員会の会長交代劇があり、その流れで新しく男女共同参画担当大臣になった人が、地方議会に対して「選択的夫婦別姓」に反対するよう求めていたことが問題になりました。
女性蔑視発言に対して世間が黙ってはいなかったこと、選択的夫婦別姓に賛成する世論が約7割となっていること、本当に時代の流れを感じます。

私の祖母は女性に参政権がなかった時代、「日本婦人有権者同盟」として活動した人でした。
戦後間もない頃、女性に対する暴力が今よりもずっと世間にはびこり、認められていた社会で、どんなに怖かっただろうか、なんという勇気だろうかと、亡くなった今になっても心の底から誇りに思います。
叩かれて、悔し涙を流し、頑張ってきた女性たちの歴史があって、今があります。

《つらくてもだめだよ。その命 自分ひとりの命じゃないよ》という大野隆司さんの言葉、私は「亡くなった人の命を引き継いでいる」という意味でも、肝に銘じたいと思います。
祖母のように勇気をもって、時代を前に進めるほどの一歩を踏み出せるかどうかは、まだ分かりませんが…。
(代表・緒方美穂子)