レインボーリボン メールマガジン 第141号 終わらない物語
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第141号
■■ 終わらない物語
2025/12/31
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東京都葛飾区を拠点とするNPO法人レインボーリボンの活動報告、代表の緒方の思いをお伝えするメールマガジンを毎月、月末にお届けしています。
年末12月31日のメルマガは活動報告ではなく、少し先の「未来日記」を書くことにしています。
今年の「未来日記」は10年後の2035年の冬のある日を描こうと思います。
登場人物は2018年12月31日のメルマガで描いた「ルナ」と「よっちゃん」です。
2018年12月31日のメルマガ
https://rainbow-ribbon-net.org/mailmagazine/mail-mag-no57/
この時は2018年の10年後、2028年のこども食堂で顔を合わせた、22才のルナと9才のよっちゃんを描いたので、今回、2035年のルナは29才に、よっちゃんは16才になっています。
――――2035年ある冬の日のこども食堂「未来日記」―――――
小春日和の暖かい日差しがまぶしい市民集会所の玄関。
この日、ここで開催予定の「こども食堂」にボランティア参加するヨシミがやってきた。
ちょうどオープンの看板を出そうと扉を開けたルナと鉢合わせに。
「ルナさん!」
「あ~、よっちゃん!久しぶり~。見違えた~。元気だった?今日、ボランティア?」
「はい、初めて、ボランティアで」
「わお、よっちゃんがボランティアに来てくれるなんて、嬉しいな~。ありがとう」
「いえいえ、小さい時さんざんお世話になったんで、恩返しですよ」
「はあ~、こんなに立派になっちゃって…。あれ、いつだったかな、よっちゃんが真っ青な顔してここに駆け込んできた日…、上着も着ないで、裸足にサンダルで、震えて何も言えない感じで…」
「7年前です」
「7年…たった7年、もう7年…。いろいろあったよね」
「あの日、あの後、ルナさんが児相に連絡してくれたんですよね?」
「児相?ああ、児童相談所ね。よっちゃんの様子があまりにも普通じゃなかったから、田中さんに言ったらね、田中さんが子ども家庭センターに連絡してくれて。田中さん、いるよ。中に入って」
「はい」
集会所の中ではボランティア・スタッフが掃除機をかけたり、おもちゃを出したり、台所では調理器具の消毒など、みんな大忙しで働いている。
田中さんは奥の事務室で今日の参加者名簿に目を通している。
ルナがヨシミを連れて入ってくる。
「田中さん、よっちゃんが来ました」
「え~!よっちゃん!久しぶり~。見違えた~。元気だった?今日、ボランティア?」
「田中さん、私と同じ反応」
ルナと田中さんはケラケラと笑うが、ヨシミは困ったように口角を少し上げるだけ。
田中さんが手招きをして…。
「よっちゃん、こっちに座って。話、聞かせて」
ルナはお掃除部隊に復帰。ヨシミは田中さんの向かいに座る。
「帰ってきたの?お母さんも一緒?」
「いえ、母はまだ…」
「まだ、あの男性と一緒に」
「はい」
「そっか、じゃあ仕方ないね。よっちゃんを叩いたり蹴ったりするような男と別れられないんじゃ、よっちゃんと一緒に暮らす資格ないから。あ、ごめんね、お母さんの悪口言って」
「いえ、いいんです。あの時も田中さんがそういうことをハッキリ言ってくださったから、母も私の一時保護に同意したんだと思います」
「うん…。ちょうど『重層的支援』っていう仕組みが動き出した時期でね。それまでは子どもを保護するかしないかとか、我々こども食堂みたいな民間ボランティアが口を出せる場はなかったんだけど、あの頃から我々も支援会議に入れるようになったのよ。
ところで、あの後、一時保護所から児童養護施設に移ったって聞いたけど」
「はい。児相の職員さんが私の意見を聞いてくれて。私、まだ9つだったから正直、母と離れて暮らすって考えられなかったんですが、ルナさんが施設で育ったって聞いて、施設がどんな所かも教えてくれて、それで、あの男がいる家に帰るよりはマシかなって」
「9つで…たいへんな決断だったね」
「はい。でも良かったです。高校生になったタイミングで、この地域で私を引き受けてくれる養親さんが見つかってラッキーでした」
「よっちゃんが高校生か~。時が経つのはホント、早いよ」
ヨシミもようやく緊張がとけたように笑う。
「でも田中さん、全然変わってない。昔のまんま」
「なに言ってるの、ご覧のとおり、もう車椅子なしでは動けないのよ。こども食堂の代表も今年で引退しま~す」
「え?田中さんがいなくなっちゃったら、ここ、どうなるんですか?」
「大丈夫。もう何年か前から運営委員会つくって合議制でやってるから。ルナさんも今年から運営委員になってくれてるのよ。ルナさん、学校の先生になったでしょ?もう職場でもベテランみたいよ。来年あたり、管理職を狙うみたい。学校も今や福祉の関係者や我々民間ボランティアと協力しないとやっていけない時代だからね」
「ふ~ん」
「よっちゃんも今日、ボランティアしてみて、楽しかったら継続して来てね。運営委員に立候補してくれてもいいよ。子どもの声をしっかり受けとめられる運営委員を募集中です!」
「田中さん、やっぱり変わってない。なんか、ホッとしました」
「私も、よっちゃんがまた来てくれて、すご~くホッとしたよ」
「絶対帰って来ようと思ってたから…。隣の県の施設に行くとき、ルナさんが言ってくれたんです。10年後、またここで会おうよって。10年も待たずに帰ってこれたから、この先もきっと大丈夫って思います」
「うん、大丈夫。よっちゃんは大丈夫。ルナさんも、私も、引退してもず~っと守ってるからね」
「はい。ず~っと、お願いします」
―――――――――終わらない未来の物語でした。――――――――
2026年もどうぞよろしくお願いいたします。
(代表・緒方美穂子)
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